(△)秋高く馬肥ゆる候、御家族様にはつつがなくお過ごしのこととお喜び申し上げます。
(コメント:「天高く馬肥ゆ」は、「空は澄みわたって高く感じられ、馬は食欲を増し、肥えてたくましくなる」の意で、「秋の好時節」をいう。「天高く馬肥ゆる候(または秋)」の形で手紙の時候のあいさつ語としてよく使われる。「日本国語大辞典」には「天高く…」と「秋高く…」の両形が掲げられているが、現在、後者の、冒頭例のような言い方ではほとんど使われない[したがって、(誤)とすることも可]。また、「天高く馬肥える(秋)」と口語で示す辞典もあるが、文語のほうが一般的であろう。この語は、中国、前漢の武将趙充国(ちょうじゅうこく)が、「秋になって馬が肥えるようになると、元気な馬にまたがって、北方の騎馬民族(匈奴〈きょうど〉)が国境に侵入してきて事変が起こるだろう(…秋に到〈いた〉れば馬肥ゆ、変〈へん〉必ず起こらん)」〈「漢書(かんじょ)」〉と予見した故事や、「秋高くして塞馬(さいば)(=辺境の馬)肥ゆ」〈初唐の杜審言(としんげん)の詩「蘇味道(そみどう)に贈る」〉などを踏まえる。これによると、本来の形は「秋高く…」である。)