学年試験が終つてから、私は東京へ行つて一夏遊んだ。秋のはじめに、また学校に戻つてみると、すでに成績が発表になつていた。百人あまりの同級生のなかで、私はまん中どころで、落第はせずに済んだ。こんどは、藤野先生の担任の学課は、解剖実習と局部解剖学とであつた。
解剖実習がはじまつてたしか一週間目ごろ、彼はまた私を呼んで、上機嫌で、例の抑揚のひどい口調でこう言つた──
「ぼくは、中国人は霊魂を敬うときいていたので、君が屍体の解剖をいやがりはしないかと思つて、ずいぶん心配したよ。まずまず安心さ、そんなことがなくてね」
しかし彼は、たまに私を困らせることもあつた。彼は、中国の女は纏足(てんそく)しているそうだが、くわしいことがわからない、と言つて、どんな風に纏足するのか、足の骨はどんな工合に畸形になるか、などと私にただし、それから嘆息して言つた。「どうしても一度見ないと、わからないね、いったい、どんな風になるものか」
学年试验完毕之后,我便到东京玩了一夏天,秋初再回学校,成绩早已发表了,同学一百余人之中,我在中间,不过是没有落第。这回藤野先生所担任的功课,是解剖实习和局部解剖学。
解剖实习了大概一星期,他又叫我去了,很高兴地,仍用了极有抑扬的声调对我说道:——
“我因为听说中国人是很敬重鬼的,所以很担心,怕你不肯解剖尸体。现在总算放心了,没有这回事。”
但他也偶有使我很为难的时候。他听说中国的女人是裹脚的,但不知道详细,所以要问我怎么裹法,足骨变成怎样的畸形,还叹息道,“总要看一看才知道。究竟是怎么一回事呢?”
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