ジミィがこの手紙を書いた後の、月曜の夜、ベン·プライスは人目につかないように、貸し馬車でエルモアへやってきた。町を静かに歩き回って、求めるものを見つけた。薬局から、通りを挟んで向かいにあるスペンサー氏の靴屋に目を向けて、ラルフ·D·スペンサーという男をじっくり見た。
「銀行家の娘と結婚するそうだな、ジミィ。」とベンは小さくつぶやいた。「どうなっても知らんぞ。」
翌朝、ジミィはアダムス家で朝食を摂った。今日はリトル·ロックへ行って、婚礼用のスーツとアナベルへ何かプレゼントを買うつもりだった。エルモアへ来てから、はじめてこの町を離れる日でもあった。もう一年以上になる。あのこなれた《稼業》の最後のおつとめから。そろそろ、外に出ても大丈夫な頃だろう。
朝食を終えると、家族そろって町の中心へ出かけた。アダムス氏、アナベル、ジミィ、アナベルの姉とその幼い娘二人で。子どもは五歳と九歳だった。一行は今もジミィが泊まっているホテルにやってきた。ジミィは部屋に上がって、あのスーツ·ケースを取ってきた。それから、銀行へ向かった。そこにはジミィの馬車と、ドルフ·ギブソンが待っていた。ギブソンはジミィを汽車の駅まで馬車で送ってくれることになっていた。
一行は、彫刻入りで背の高い樫の柵の向こう、銀行の執務室へ入った。ジミィも連れて入ったということは、将来アダムス家の婿となる男として、どこでも歓迎するという意味でもあった。銀行員一同は、アナベル嬢と結婚する、この愛想のよい美青年から挨拶されて、とてもよろこんだ。ジミィはスーツ·ケースを床に降ろした。アナベルはとても幸せだったし、まだとても若かったから、心臓がどきどきしっぱなしだった。ジミィの帽子をかぶって、スーツ·ケースを持ち上げた。
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