鶴の恩返し
(日本昔話)
むかし、家禄(かろく) という貧(まず) しい若者(わかもの) がいました。
家禄は、年老(としお) いた母親と暮(く) らしていました。
ある時、山の中でわなにかかった鶴を見つけました。
「おお、かわいそうに。」
家禄は、鶴のわなをはずして、逃(に) がしてやりました。
とても寒い夜でした。
誰かが、とんとんと戸(と) を叩(たた) きます。
家禄が、不思議(ふしぎ) に思って戸を開けてみると、外に驚(おどろ) くほど美しい娘(むすめ) が立っています。
娘は、美しい声で言いました。
「道に迷(まよ) ってしまいました。どうか、一晩(ひとばん) 泊めてください。」
家禄は驚きましたが、それでも快(こころよ) く泊めてやることにしました。
次の日、突然娘が言いました。
「わたしをあなたのお嫁(よめ) さんにしてください。」
家禄は、またびっくりです。
「毎日、食べるものもないほど、貧しいわたしです。お嫁さんをもらうなんて、無理(むり) で
す。」
でも、娘は、「それでもいいですから。」と言って、聞きません。
それを聞いた家禄のお母さんが、「それほど言うのなら、お嫁にしてあげなさい。」と家
禄に言いました。
とても幸(しあわ) せな日が続(つづ) きました。ある時、お嫁さんが言いました。
「これから三日で、わたしは布(ぬの) を織(お) ります。でも、わたしの姿(すがた) は絶対に覗(のぞ) かないでく
ださい。」
そして、機織(はたおり) の周りをぐるりと屏風(びょうぶ) で囲んでしまいました。
トンカラカラトンカラカラと、布を織り、三日目(め) にそれはそれはきれいな布をもって、
屏風のかげから出てきました。
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