そういえば、長崎で筑紫哲也さんからとても興味ある話を聞きました。今から100年以上も前の幕末のころ、多くの外国人が日本に来ました。彼らが本国に戻ってから多くの当時の日本についての書物を書いています。①それらに共通する日本の当時の子どもたちについての記述があるというのです。
どの書物にも、「日本の子どもたちは世界で一番かわいい。何より目が輝いている。それに日本の大人たちはとても子どもたちをかわいがっている。いつでもだっこやおんぶをし、そばに近づくと私たちに抱き上げて見せてくれる。こんな子どもたちが幸せな日々を過ごしている国はない」と書いてあるというのです。
何となく納得できました。なぜなら、私が子ども時代もそうでしたから。でも、今はどうでしょう。子どもたちは、それだけかわいがられているのでしょうか。子どもたちの目は輝いているのでしょうか。
私の住む夜の街の子どもたちの目は、②ほとんどと言っていいほどどうつろです。私が講演会場や昼の町で出会う子どもたちの目から、輝きが消えてきている気がします。
「目は心の窓」と言われます。人は、明日への夢や希望に生きているときに目を輝かせます。言いかえれば、今の日本の子どもたちの多くは、明日への希望や夢を失っているのではないでしょうか。
それでは、どうのようにして子どもたちの目に輝きを取り戻させればいいのでしょうか。私は、これは簡単なことに思えます。まずは、ほめてあげること。私は、これは簡単なことに思えます。親や教員、周りの大人たちがきちんと認め、ほめてあげることです。そして、子どもたちの明日の夢を一緒に考えていく。すぐにできることです。
でも、これにはある前提が必要です。子どもたちを認め誉めてあげる大人自身が、明日への希望や夢に満ち、輝いた目で語ることです。
今の日本でこれをできる大人はどれだけいるのでしょうか。このところ私は、子どもたち以上に、大人たちが病んでいるように感じています。どうぞ、皆さんの周りを見渡してください。目を輝かせ、明日を熱く語る大人はどれだけいますか。
私は、22年間の教員生活で最も幸せを感じたのは、関わっている子どもたちの目が輝いていくことでした。そのために、いつも私自身が明日を夢見てきました。
練習問題
1、文中の①「それらに」の「それら」は何を指すか。
書物
希望や夢
心の窓
興味
2、文中の②「ほとんどと言っていいほどどうつろです」の説明として最も適切なものはどれか。
子どもたちの目はあまりうつろではないといってもいい。
子どもたちの目はうつろほどではないと言ってもいい。
子どもたちの目は大部分うつろだと言ってもいい。
子どもたちの目は少しうつろだと言ってもいい。
3、「子どもたちの目に輝きを取り戻させる」前提は何か。
親や教員、周りの大人たちがきちんと子どもたちのことを認めること。
子どもたちのことが何となく納得できること。
子どもたちをいつもだっこやおんぶをしてかわいがること。
子どもたちを認め誉めてあげる大人自身が、明日への希望や夢に満ち、輝いた目で語ること。