古代中国で誕生した「漢字」は、朝鮮半島や日本列島にも伝播しました。中国も韓国・朝鮮も日本も「漢字・漢語文化圏」と呼ばれるのですが、日本と韓国・朝鮮で異なる漢字熟語も少なくありません。それで、日本人の朝鮮語学習者、韓国・朝鮮人の日本語学習者はお互いの漢字・漢語が実は非なるものでありながら、似ているために、間違ってしまうことがよくあります。
朝鮮語話者による日本語文には、次のような誤用がよく見られます。正しく直すとどうなるでしょうか。漢語の部分に注意しながら考えてみてください。
1.学院で熱心に工夫したので、大入に成功しました。
2.私の食口は、父母様にお姉様、私に同生2人です。
3.万若契約するなら、ここにサインして図章を押して下さい。
4.外国の親旧に便紙を書きますから、郵票を磨錬しましょう。
5.相対にきちんと人事をすることが、基本的な礼儀です。
分かりましたか。答えは次のようになります。→で示した語句が正しい日本語です。
1.学院→予備校・学習塾、工夫→勉強、大入→大学入試、2.食口→家族、同生→弟・妹、3.万若→もし、図章→印鑑、4.親旧→友人、便紙→手紙、郵票→切手、磨錬→準備、5.相対→相手、人事→挨拶
これらの間違いは、朝鮮語の漢字熟語をそのまま日本語文の中で使ったために起きたものです。同じ漢字・漢語文化圏なので、お互いの言語が学び易い面もありますが、上述のような落とし穴もあるので注意しましょう。なお、2の「父母様」「お姉様」のような間違いについては、次回のコラムで取り上げます。
泉文明
龍谷大学国際文化学部助教授