ロバの耳の王子
(プルトガル民話)
昔々(むかしむかし)。
とても子供がほしい王様(おうさま)とお妃様(きさきさま)がいました。
二人は三人の妖精(ようせい)に「どうか、私たちに子供を授(さず)けてほしい。」とお願(ねが)いをしました。
「きっと、その願いは叶(かな)うでしょう。」
妖精たちは答えました。
十か月が経(た)ち、王子様が生(う)まれました。
三人の妖精は、王子様に贈(おく)り物(もの)をするために、やってきました。
一人目(め)の妖精は美(うつく)しさを、二人目は賢(かしこ)さを王子様に送りました。
三人目は、もう送るものがありません。そこで、腹(はら)を立てて、「王子には、ロバの耳が生(は)えろ!」と叫(さけ)んだのです。
王子の耳は本当(ほんとう)に、ロバの耳になってしまいました。
そこで、王様は、特別(とくべつ)な帽子(ぼうし)を作(つく)らせて、王子の耳をいつも隠(かく)していました。
でも、王子もやがて髪(かみ)を切(き)らなくてはならない年ごろになったのです。
王様は床屋(とこや)を呼んで、こう命令(めいれい)しました。
「お前が見たものを誰にも喋(しゃべ)ってはならない。もし喋ったら、首(くび)を切るぞ」
でも、床屋は見たことを喋りたくてたまりません。
そこで、教会(きょうかい)の神父(しんぷ)様に相談(そうだん)をしました。
神父様は「土に穴(あな)を掘(ほ)って、その秘密(ひみつ)を話(はな)しなさい。後(あと)から、穴(あな)を埋(う)めてしまうのです。」と、教(おし)えました。
床屋は、教えられた通(とお)りにしました。
暫(しばら)くすると、穴のところから、葦が生(は)えてきました。
一人の羊飼(ひつじか)いがその葦で笛を作りました。
そして、その笛を吹くと、「王子の耳はロバの耳。王子の耳はロバの耳。」と鳴(な)るではありませんか。
この笛はたちまち評判(ひょうばん)になり、王様の耳にも届(とど)きました。
驚(おどろ)いた王様が羊飼いを呼(よ)んで、自分で笛を吹いてみました。
すると、やはり、「王子の耳はロバの耳」となるのです。
怒った王様は、床屋の首を刎(は)ねようとしました。
すると、王子様がこう叫んだのです。
「もういいよ。僕の耳がロバの耳だと、みんなに分(わ)かればいいんだから。」
王子は、たくさんの人が集まっている広場(ひろば)で、帽子(ぼうし)を脱(ぬ)いだのです。
でも、人々が見たものは、普通(ふつう)の形(かたち)をした、王子様の耳でした。
王様もお妃様も大喜(おおよろこ)びです。
そうそう、あの笛も二度と「王子の耳はロバの耳」とは鳴りませんでした。
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