兎と亀
(イソップ寓話)
亀が、ゆっくりゆっくり道を歩いていました。池にある、自分の家に帰(かえ)るところです。
そこへ兎が、ぴょんぴょんと跳(は)ねながらやって来ました。「亀君、あんたはほうとうに遅(おそ)いねえ。それでは家に着く前に、日(ひ)が暮(く)れてしまうよ。」亀は、怒って言いました。「僕(ぼく)だって、いざとなれば、とても早(はや)く走(はし)ることができるんだ。」兎は、笑って言いました。「いざっていうのは、何時(いつ)のことだい。」それから、兎は少し考えてから言いました。「よし、明日の朝、向こうの岡(おか)まで競争(きょうそう)しようよ。それが君のいざっていう時さ。」「分かった。競争しよう。」亀は答えました。
次の朝、亀と兎は岡の天辺(てっぺん)目指(めざ)して、よーい、どんです。兎はぴょんぴょん川を渡(わた)り、森を過ぎ、野原(のはら)を横切(よこぎ)って走りました。岡に登る坂道(さかみち)まで来た時、兎は振(ふ)り返(かえ)りました。
亀の姿(すがた)は見えません。「ふん、どんな問題。だいたい、亀が兎とかけっこしようなんて馬鹿(ばか)な話さ。どれ、ここいらで一休みしよう。」兎はそばの草原(くさはら)にごろんと寝転(ねころ)び、そのまま眠ってしまいました。
亀は随分(ずいぶん)経(た)ってから、兎の所まで来ました。一生懸命歩いたので、汗(あせ)びっしょりです。でも、寝ている兎を見て、にっこり笑いながら言いました。「お先(さき)に失礼。」こうして、兎は亀に負(ま)けたのです。
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