ナイチンゲール
(アンデルセン童話)
これは、中国の昔の話です。森が幾(いく)つもある広(ひろ)い王様(おうさま)の庭に、一羽のナイチンゲールが住んでいました。王様の所には、世界中の人が訪(たず)ねてきます。そして、ナイチンゲールの声を「世界で一番美しい声だ。」とうっとりして言うのでした。でも、王様はナイチンゲールの声を聞いたことはありませんでした。そこで大臣(だいじん)に、「ナイチンゲールを、捕まえてこい。」と命令(めいれい)しました。「すぐ捕(つか)まえて参ります。」大臣はそう言いましたが、ナイチンゲールを知っている者は、いませんでした。
そこで、家来(けらい)たち全部で、庭を探すことにしました。台所(だいどころ)で働(はたら)いている貧(まず)しい娘が、ナイチンゲールの居場所(いばしょ)を教えてくれました。大臣はナイチンゲールに言いました。
「その歌声(うたごえ)を王様に聞かせてもらえまいか。」「いいわよ、王様がお望(のぞ)みなら。」ナイチンゲールは答えて、王様の前に飛(と)んで行きました。王様は、ナイチンゲールのあまりに美しい歌声に、涙がこぼれ落(お)ちました。こうして、ナイチンゲールは王様の傍に住むことになりました。
ある時、王様はナイチンゲールそっくりのねじまき鳥をプレゼントされました。体中、宝石(ほうせき)がちりばめてあります。声も綺麗(きれい)です。「では、生きているナイチンゲールにも歌わせてねじまき鳥と比べてみよう。」王様はそう言いましたが、あのナイチンゲールは窓から飛び出して、どかかへ行ってしまったのです。
ねじまき鳥は国中(くにじゅう)の人から愛されました。でも一年経った時、ブルブルブルッと音(おと)がして、壊れてしまったのです。すぐに、時計作(とけいづく)りが呼(よ)ばれました。「これは一年に一度しか鳴(な)らしてはいけません。」王様はがっかりです。あまりがっかりしたので、重い病気になってしまいました。
ある日、王様の窓辺(まどべ)に、あのナイチンゲールの歌声が響(ひび)きました。王様に勇気(ゆうき)をあげようと、遠(とお)い森から飛んできたのです。「ありがとう、ありがとう。」王様は涙を流して喜(よろこ)び、お礼を言(い)いました。そして、病気になってから初めてぐっすりと眠れたのです。次の朝、王様の病気はすっかり治(なお)っていました。
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