若返りの水
(日本民話)
昔々。ある所に、おじいさんとおばあさんがいました。ある日のこと、おじいさんは山に炭焼(すみや)きに行きました。とても暑(あつ)い日だったので、喉(のど)が渇(かわ)いてきました。「どこかに、湧(わ)き水(みず)はないかな。」捜して見ると、少し離れた岩(いわ)から水が湧き出ています。
おじいさんが水が手で掬(すく)って飲(の)むと、美味しいこと、美味しいこと。
そして、おじいさんの体がしゃんとして、曲(ま)がっていた腰も伸びて、おじいさんは若者(わかもの)になっていました。おじいさんは喜んで、家に飛んで帰(かえ)りました。「ばあさんや、今帰ったよ。」
「おや、今日は早かったねえ。」そう言いながら、おじいさんを見たおばあさんはもうびっくりです。「あれまあ、家のじいさんが急(きゅう)に若くなった。どういうわけじゃ。」
そこで、おじいさんは、山で不思議(ふしぎ)な水を飲んだことを話しました。「なんと羨(うらや)ましい。じいさん、その場所(ばしょ)を私(わたし)に教(おし)えておくれ。」おばあさんは、そう言って、おじいさんに水の場所を詳しく聞きました。
次の朝、おばあさんは山に行きました。おじいさんが留守番(るすばん)です。ところが、夕方になっても、おばあさんは戻ってきません。「ばあさんは、何(なに)をぐずぐずしているんだろう。谷(たに)にでも落ちて、怪我(けが)でもしていなけりゃいいんだがなあ。」心配(しんぱい)になったおじいさんは、村の人たちに頼んで、おばあさんを捜しに出かけました。
あの湧き水の近くまで来ると、赤(あか)ちゃんの泣(な)き声(ごえ)が聞(き)こえます。驚いて、声のするほうに行ってみると、おばあさんの着物(きもの)を着(き)た赤ちゃんが泣いています。「ははあ、ばあさんはうんと若(わか)くなろうと思って、水をたくさん飲(の)み過(す)ぎたんだな。」おじいさんはそういうと赤(あか)ちゃんを抱(だ)き上(あ)げて、家(いえ)に戻(もど)っていきました。
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