地下宮殿―十三陵
A これからは、十三陵へまいりますが。
B 十三陵は明の時代の皇帝の陵墓群として有名ですね。
A はい。明の時代の皇帝16人のうち、13人がそこに眠っておりますので、「十三陵」と呼ばれるわけでございます。
C 皇室のお墓が13ともなれば、ずいぶん広い土地でないと、なかなか入りきれないでしょうね。
A そのとおりでございます。十三陵は敷地面積がのべ40平方キロにもなります。
C まあ、きれいだこと。ピンク色の桃の花や、真っ白な梨の花がいっせいに咲きほこって、あたかも御花海みたいですね。
B ご覧なさいな。参道の両側には石の像がずらりと立ち並んでいますね。ほら、馬、象、駱駝...兵士や将軍の像もありますね。
C おや、あれはなんでしょう。ほら、あの変な格好をしている動物は?
A ああ、あれは麒麟でございます。伝説にめでたい動物でございますが。
C 十三陵で一番大きいのは長陵でしょうね。
A はい。残念なことには、地下宮殿に入って現物できるのは定陵だけで、ほかの陵墓はまだ発掘されておりません。
C まず定陵の地下宮殿を見物しましょうか。
A はい。...定陵でございます。わたくしについて、こちらへどうぞ。...いま通っているのは地下宮殿の周りの塀で、「金鋼壁」といいます。いま潜った門は金鋼門といい、一番外側の門にあたります。
B また門が一つ。暑いな、この石の扉は!
A この石門はとんねるの門といいますが、地下宮殿の入り口にあたる門でございます。その石の扉は4トンもございます。
C ここに太い石の棒が一本ありますね。なんて長いこと。
A それは石の扉を支えるもので、天然石でございます。
B とんねるのうえのほうは漢白玉という石で積み上げられたアーチですね。
A 定陵の地下宮殿は前殿、中殿、後殿、左殿、右殿という五つの宮殿に分けられておりますが、いまわたしたちの立っているところは前殿で、次は中殿でございます。
B こちらが中殿でしょう。玉座が三つもありますね。ほかに大きなかめや香炉、蝋燭立などもありますね。
A じつは、このかめは長明灯で、中には灯油がいっぱい入っておりました。
C あら、ここには二つの通路がありますわ。
A はい。ここからは左右の二つの宮殿にいけます。
B 五つの宮殿のうちに一番大きいのが後殿だそうですから、まずそちらのほうへいってみましょうか。
A そういたしましょう。...後殿は皇帝と皇后の陵で、つまりお棺を置くところでございます。C まあ、なんて大きいお棺でしょう。
B 棺を置く台の上に棺おけが三つありますが、真ん中のほうが一番大きいですね。
A はい。真ん中にある大きいのが明の万暦皇帝朱翌均の柩で、両側のやや小さいのが二人の皇后の柩でございます。
C ほかに、はこもたくさんありますね。なかになにか入っているのかしら。
A それらの箱は副葬用のもので、26もあって、なかには副葬品がいっぱいはいっておりました。たとえば、錦や、服装や金銀や功績のアクセサリー、うつわ、磁器などめずらしいほうもつばかりでございます。
B ここから出土した文物はどのぐらいありますか。
A 統計によりますと、3000あまりもあるそうでございます。
C なんといっても、皇室のお墓なんですもの。
B 出土された文物はいまは全部博物館に展示されているのですが。
A はい。午後博物館のほうへまいりますから、たのしみにしてください。
C ああ、ちょっとすみませんが、お昼は明苑ホテルでですね。
A はい。明苑ホテルは中国でもユニークなホテルで、六つの四合院からできており、リゾート感覚と明の時代の宮殿建築様式gミックスされたものとなっております。
C いいわあ、四合院って。中国風のホテルで中華料理を味わって、いいわよね。ねえ?
B うん、高層ホテルとはまた一味ちがった古都北京の味わいが楽しめるでしょうなあ。