本文:
A
漢字の問題といいますと、まず、どんなことが取り上げられるんでしょうか。
B
あれでしょうね。音訓の二本立てというなんかですかね。
A
一つの漢字の音と訓が両方あるってことですか。
B
ええ、しかも、それが文脈の中でいろいろに使い分けられているのでやっかいですよね。
A
そうですね。たとえば「生」なんて字は、いったい、いくつぐらい読み方があるんでしょうね。
B
ざっと数えて十五ぐらいはあるんじゃないですか。ただ、漢字の問題といっても、実は「字」字の文字そのものの問題というよりは、語彙の問題じゃないでしょうか。
A
それは具体的に言いますと。
B
和語と漢語といってもいいんですが、たとえば、床屋と理髪店、あしたと明日、というような…。
A
それは確かにそうですね。あの、日本語では文体の違いが大きくて、外国人が勉強する時、大変苦労するっいうことを聞いたんですが。
B
そうですね。耳に聞く場合に限って言っても、買い物をするとか、友達と話をするとかいう日常生活のことばと、改まった時のことばはずいぶん違いますからね。
A
そうですね。演説とか、大学の講義とか。
B
そういう時は、ふだんの会話であまり使わないことばがずいぶん入ってきますね。
A
なにか、例をだしてくださいますか。
B
ええと、「きょう午後三時から会議を開きます。」というところを「今日午後三時より会議を開催たします」とか。
A
そうですね。同じようなことを言うにも、偉そうに見えるということは事実ですよね。
B
まあ、漢語をたくさん使った、形式ばった表現の方が格調の高い文だという考え、知識人といわれるような人たち残っているんじゃないかと思うんですがね。
A
そうかもしれませんね。仮名なんてもとは、大対女子供の使うものであって、インテリは漢文だという考えはずいぶん長く続いていましたからね。
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