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鲁迅《阿Q正传》(日汉对照)(七)

彼は禿瘡の一つ一つを皆赤くして著物を地上に突放し、ペッと唾を吐いた。


「この毛虫め」


「やい、瘡(かさ)ッかき。てめえは誰の悪口を言うのだ」王「髟/胡」は眼を挙げてさげすみながら言った。


阿Qは近頃割合に人の尊敬を受け、自分もいささか高慢稚気(こうまんちき)になっているが、いつもやり合う人達の面を見ると、やはり心が怯(おく)れてしまう。ところが今度に限って非常な勢(いきおい)だ。何だ、こんな「髟/胡」(ひげ)だらけの代物が生意気|言(い)やがるとばかりで


「誰のこったか、おらあ知らねえ」阿Qは立ち上って、両手を腰の間に支えた。


「この野郎、骨が痒くなったな」王「髟/胡」も立ち上がって著物を著た。


他癞疮疤块块通红了,将衣服摔在地上,吐一口唾沫,说:


“这毛虫!”


“癞皮狗,你骂谁?”王胡轻蔑的抬起眼来说。


阿Q近来虽然比较的受人尊敬,自己也更高傲些,但和那些打惯的闲人们见面还胆怯,独有这回却非常武勇了。这样满脸胡子的东西,也敢出言无状么?


“谁认便骂谁!”他站起来,两手叉在腰间说。


“你的骨头痒了么?”王胡也站起来,披上衣服说。


相手が逃げ出すかと思ったら、掴み掛(かか)って来たので、阿Qは拳骨を固めて一突き呉(く)れた。その拳骨がまだ向うの身体(からだ)に届かぬうちに、腕を抑えられ、阿Qはよろよろと腰を浮かした。(ね)じつけられた辮子は墻(まがき)の方へと引張られて行って、いつもの通りそこで鉢合せが始まるのだ。


「君子は口を動かして手を動かさず」と阿Qは首を歪めながら言った。


阿Q以为他要逃了,抢进去就是一拳。这拳头还未达到身上,已经被他抓住了,只一拉,阿Q跄跄踉踉的跌进去,立刻又被王胡扭住了辫子,要拉到墙上照例去碰头。


“君子动口不动手!”阿Q歪着头说。


王「髟/胡」は君子でないと見え、遠慮会釈もなく彼の頭を五つほど壁にぶっつけて力任せに突放(つっぱな)すと、阿Qはふらふらと六尺余り遠ざかった。そこで「髟/胡」(ひげ)は大(おおい)に満足して立去った。


阿Qの記憶ではおおかたこれは生れて初めての屈辱といってもいい、王「髟/胡」は顋(あご)に絡まる「髟/胡」(ひげ)の欠点で前から阿Qに侮られていたが、阿Qを侮ったことは無かった。むろん手出しなど出来るはずの者ではなかったが、ところが現在遂に手出しをしたから妙だ。まさか世間の噂のように皇帝が登用(とうよう)試験をやめて秀才も挙人(きょじん)も不用になり、それで趙家の威風が減じ、それで彼等も阿Qに対して見下すようになったのか。そんなことはありそうにも思われない。


阿Qは拠所(よんどころ)なく彳(たたず)んだ。


王胡似乎不是君子,并不理会,一连给他碰了五下,又用力的一推,至于阿Q跌出六尺多远,这才满足的去了。


在阿Q的记忆上,这大约要算是生平第一件的屈辱,因为王胡以络腮胡子的缺点,向来只被他奚落,从没有奚落他,更不必说动手了。而他现在竟动手,很意外,难道真如市上所说,皇帝已经停了考,不要秀才和举人了,因此赵家减了威风,因此他们也便小觑了他么?


阿Q无可适从的站着。


遠くの方から歩いて来た一人は彼の真正面に向っていた。これも阿Qの大嫌いの一人で、すなわち錢太爺の総領息子だ。彼は以前城内の耶蘇(やそ)学校に通学していたが、なぜかしらんまた日本へ行った。半年あとで彼が家(うち)に帰って来た時には膝が真直ぐになり、頭の上の辮子が無くなっていた。彼の母親は大泣きに泣いて十幾幕も愁歎場(しゅうたんば)を見せた。彼の祖母は三度井戸に飛び込んで三度引上げらた。あとで彼の母親は到処(いたるところ)で説明した。


「あの辮子は悪い人から酒に盛りつぶされて剪(き)り取られたんです。本来あれがあればこそ大官(たいかん)になれるんですが、今となっては仕方がありません。長く伸びるのを待つばかりです」


さはいえ阿Qは承知せず、一途に彼を「偽|毛唐(けとう)」「外国人の犬」と思い込み、彼を見るたんびに肚(はら)の中で罵(ののし)り悪(にく)んだ。


远远的走来了一个人,他的对头又到了。这也是阿Q最厌恶的一个人,就是钱太爷的大儿子。他先前跑上城里去进洋学堂,不知怎么又跑到东洋去了,半年之后他回到家里来,腿也直了,辫子也不见了,他的母亲大哭了十几场,他的老婆跳了三回井。后来,他的母亲到处说,“这辫子是被坏人灌醉了酒剪去了。本来可以做大官,现在只好等留长再说了。”然而阿Q不肯信,偏称他“假洋鬼子”,也叫作“里通外国的人”,一见他,一定在肚子里暗暗的咒骂。


阿Qが最も忌み嫌ったのは、彼の一本のまがい辮子だ。擬(まが)い物と来てはそれこそ人間の資格がない。彼の祖母が四度(よど)目の投身をしなかったのは善良の女でないと阿Qは思った。


その「偽毛唐」が今近づいて来た。「禿(は)げ、驢(ろ)……」阿Qは今まで肚の中で罵るだけで口へ出して言ったことはなかったが、今度は正義の憤(いきどお)りでもあるし、復讎の観念もあったかた、思わず知らず出てしまった。


ところがこの禿の奴、一本のニス塗りのステッキを持っていて――それこそ阿Qに言わせると葬式の泣き杖(づえ)だ――大跨(おおまた)に歩いて来た。この一|刹那(せつな)に阿Qは打たれるような気がして、筋骨を引締(ひきし)め肩を聳(そびや)かして待っていると果して


ピシャリ。


確かに自分の頭に違いない。


「あいつのことを言ったんです」と阿Qは、側(そば)に遊んでいる一人の子供を指さした。


ピシャリ、ピシャリ。


阿Q尤其“深恶而痛绝之”的,是他的一条假辫子。辫子而至于假,就是没有了做人的资格;他的老婆不跳第四回井,也不是好女人。


这“假洋鬼子”近来了。


“秃儿。驴……”阿Q历来本只在肚子里骂,没有出过声,这回因为正气忿,因为要报仇,便不由的轻轻的说出来了。


不料这秃儿却拿着一支黄漆的棍子——就是阿Q所谓哭丧棒——大蹋步走了过来。阿Q在这刹那,便知道大约要打了,赶紧抽紧筋骨,耸了肩膀等候着,果然,拍的一声,似乎确凿打在自己头上了。


“我说他!”阿Q指着近旁的一个孩子,分辩说。


啪!啪啪!


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