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「泥棒の見張をするのかえ」 「いいえ、旅の人が喉が渇いて一つぐらい取って食べても、家(うち)の方では泥棒の数に入れません。見張が要るのは猪(いのしし)、山あらし、土竜の類(るい)です。月明りの下でじっと耳を澄ましているとララと響いて来ます。土竜が瓜を噛んでるんですよ。その時あなたは叉棒を攫(つか)んでそっと行って御覧なさい」 わたしはそのいわゆる土竜というものがどんなものか、その時ちっとも知らなかった。――今でも解らない――ただわけもなく、小犬のような形で非常に猛烈のように感じた。 闰土又对我说: “现在太冷,你夏天到我们这里来。我们日里到海边捡贝壳去,红的绿的都有,鬼见怕也有,观音手⑸也有。晚上我和爹管西瓜去,你也去。” “管贼么?” “不是。走路的人口渴了摘一个瓜吃,我们这里是不算偷的。要管的是獾猪,刺猬,猹。月亮底下,你听,啦啦的响了,猹在咬瓜了。你便捏了胡叉,轻轻地走去……” 我那时并不知道这所谓猹的是怎么一件东西——便是现在也没有知道——只是无端的觉得状如小狗而很凶猛。 「彼は咬(か)みついて来るだろうね」 「こちらには叉棒がありますからね。歩いて行って見つけ次第、あなたはそれを刺せばいい。こん畜生は馬鹿に利巧な奴で、あべこべにあなたの方へ馳け出して来て、跨の下から逃げてゆきます。あいつの毛皮は油のように滑(すべ)ッこい」 わたしは今までこれほど多くの珍らしいことが世の中にあろうとは知らなかった。海辺にこんな五|色(しき)の貝殻があったり、西瓜にこんな危険性があったり――わたしは今の先(さ)きまで西瓜は水菓子屋の店に売っているものとばかし思っていた。 「わたしどもの沙地の中には大潮の来る前に、たくさん跳ね魚が集(あつま)って来て、ただそれだけが跳ね廻っています。青蛙のように二つの脚があって……」 “他不咬人么?” “有胡叉呢。走到了,看见猹了,你便刺。这畜生很伶俐,倒向你奔来,反从胯下窜了。他的皮毛是油一般的滑……” 我素不知道天下有这许多新鲜事:海边有如许五色的贝壳;西瓜有这样危险的经历,我先前单知道他在水果电里出卖罢了。 “我们沙地里,潮汛要来的时候,就有许多跳鱼儿只是跳,都有青蛙似的两个脚……” ああ閏土の胸の中には際限もなく不思議な話が繋がっていた。それはふだんわたしどもの往来(ゆきき)している友達の知らぬことばかりで、彼等は本当に何一つ知らなかった。閏土が海辺にいる時彼等はわたしと同じように、高塀に囲まれた屋敷の上の四角な空ばかり眺めていたのだから。 惜しいかな、正月は過ぎ去り、閏土は彼の郷里に帰ることになった。わたしは大哭(おおな)きに哭いた。閏土もまた泣き出し、台所に隠れて出て行くまいとしたが、遂に彼の父親に引張り出された。 彼はその後父親に託(ことづ)けて貝殻一|包(つつみ)と見事な鳥の毛を何本か送って寄越した。わたしの方でも一二度品物を届けてやったこともあるが、それきり顔を見たことが無い。 阿!闰土的心里有无穷无尽的希奇的事,都是我往常的朋友所不知道的。他们不知道一些事,闰土在海边时,他们都和我一样只看见院子里高墙上的四角的天空。 可惜正月过去了,闰土须回家里去,我急得大哭,他也躲到厨房里,哭着不肯出门,但终于被他父亲带走了。他后来还托他的父亲带给我一包贝壳和几支很好看的鸟毛,我也曾送他一两次东西,但从此没有再见面。 現在わたしの母が彼のことを持出したので、わたしのあの時の記憶が電(いなずま)の如くよみがえって来て、本当に自分の美しい故郷を見きわめたように覚えた。わたしは声に応じて答えた。 「そりゃ面白い。彼はどんな風です」 「あの人かえ、あの人の景気もあんまりよくないようだよ」 母はそういいながら室(へや)の外を見た。 「おやまた誰か来たよ。木器(もくき)買うと言っては手当り次第に持って行くんだから、わたしがちょっと見て来ましょう」 母が出て行くと門外の方で四五人の女の声がした。わたしは宏兒を側(そば)へ喚(よ)んで彼と話をした。字が書けるか、この家(うち)を出て行きたいと思うか、などということを訊いてみた。 「わたしどもは汽車に乗ってゆくのですか」 「汽車に乗ってゆくんだよ」 「船は?」 「まず船に乗るんだ」 「おや、こんなになったんですかね。お鬚がまあ長くなりましたこと」 一種尖ったおかしな声が突然わめき出した。 现在我的母亲提起了他,我这儿时的记忆,忽而全都闪电似的苏生过来,似乎看到了我的美丽的故乡了。我应声说: “这好极!他,——怎样?……” “他?……他景况也很不如意……”母亲说着,便向房外看,“这些人又来了。说是买木器,顺手也就随便拿走的,我得去看看。” 母亲站起身,出去了。门外有几个女人的声音。我便招宏儿走近面前,和他闲话:问他可会写字,可愿意出门。 “我们坐火车去么?” “我们坐火车去。” “船呢?” “先坐船,……” “哈!这模样了!胡子这么长了!”一种尖利的怪声突然大叫起来。 |
鲁迅《故乡》(日汉对照)(三)
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