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鲁迅《故乡》日文版(二)

この時わたしの頭の中に一つの神さびた画面が閃き出した。深藍色(はなだいろ)の大空にかかる月はまんまろの黄金色(こがねいろ)であった。下は海辺の砂地に作られた西瓜(すいか)畑で、果てしもなき碧緑の中に十一二歳の少年がぽつりと一人立っている。項(えり)には銀の輪を掛け、手には鋼鉄の叉棒(さすぼう)を握って一|疋(ぴき)の土竜(もぐら)に向って力任せに突き刺すと、土竜は身をひねって彼の跨(また)ぐらを潜(くぐ)って逃げ出す。


这时候,我的脑里忽然闪出一幅神异的图画来:深蓝的天空中挂着一轮金黄的圆月,下面是海边的沙地,都种着一望无际的碧绿的西瓜,其间有一个十一二岁的少年,项带银圈,手捏一柄钢叉,向一匹猹尽力的刺去,那猹却将身一扭,反从他的胯下逃走了。


この少年が閏土であった。わたしが彼を知ったのは十幾つかの歳であったが、別れて今は三十年にもなる。あの時分は父も在世して家事の都合もよく、わたしは一人の坊ッちゃまであった。その年はちょうど三十何年目に一度廻って来る家(うち)の大祭の年に当り、祭は鄭重を極め、正月中掲げられた影像の前には多くの供え物をなし、祭器の撰択が八釜(やかま)しく行われ、参詣人が雑沓(ざっとう)するので泥棒の用心をしなければならぬ。わたしの家(うち)には忙月(マンユエ)が一人きりだから手廻りかね、祭器の見張番に倅(せがれ)をよびたいと申出たので父はこれを許した。(この村の小作人は三つに分れている。一年契約の者を長年(チャンネン)といい、日雇いの者を短工(トワンコン)という。自分で地面を持ち節期時や刈入時に臨時に人の家に行って仕事をする者を忙月(マンユエ)という)


这少年便是闰土。我认识他时,也不过十多岁,离现在将有三十年了;那时我的父亲还在世,家景也好,我正是一个少爷。那一年,我家是一件大祭祀的值年。这祭祀,说是三十多年才能轮到一回,所以很郑重;正月里供祖像,供品很多,祭器很讲究,拜的人也很多,祭器也很要防偷去。我家只有一个忙月(我们这里给人做工的分三种:整年给一定人家做工的叫长工;按日给人做工的叫短工;自己也种地,只在过年过节以及收租时候来给一定人家做工的称忙月),忙不过来,他便对父亲说,可以叫他的儿子闰土来管祭器的。


わたしは閏土が来ると聞いて非常に嬉しく思った。というのはわたしは前から閏土の名前を聞き及んでいるし、年頃もわたしとおつかつだし、閏月(うるうづき)生れで五行の土が欠けているから閏土と名づけたわけも知っていた。彼は仕掛罠で小鳥を取ることが上手だ。


我的父亲允许了;我也很高兴,因为我早听到闰土这名字,而且知道他和我仿佛年纪,闰月生的,五行缺土,所以他的父亲叫他闰土。他是能装弶捉小鸟雀的。


わたしは日々に新年の来るのを待ちかねた。新年が来ると閏土も来るのだ。まもなく年末になり、ある日の事、母はわたしを呼んで


「閏土が来たよ」と告げた。わたしは馳(か)け出して行ってみると、彼は炊事部屋にいた。紫色の丸顔! 頭に小さな漉羅紗帽(すきらしゃぼう)をかぶり、項にキラキラした銀の頸輪(くびわ)を掛け、――これを見ても彼の父親がいかに彼を愛しているかが解る。彼の死去を恐れて神仏に願を掛け、頸に輪を掛け、彼を庇護しているのである――人を見て大層はにかんだが、わたしに対して特別だった。誰もいない時に好く話をして、半日経たぬうちに我々はすっかり仲よしになった。


我于是日日盼望新年,新年到,闰土也就到了。好容易到了年末,有一日,母亲告诉我,闰土来了,我便飞跑的去看。他正在厨房里,紫色的圆脸,头戴一顶小毡帽,颈上套一个明晃晃的银项圈,这可见他的父亲十分爱他,怕他死去,所以在神佛面前许下愿心,用圈子将他套住了。他见人很怕羞,只是不怕我,没有旁人的时候,便和我说话,于是不到半日,我们便熟识了。


われわれはその時、何か知らんいろんな事を話したが、ただ覚えているのは、閏土が非常にハシャいで、まだ見たことのないいろいろの物を街へ来て初めて見たとの話だった。


次の日わたしは彼に鳥をつかまえてくれと頼んだ。


「それは出来ません。大雪が降ればいいのですがね。わたしどもの沙地(すなぢ)の上に雪が降ると、わたしは雪を掻き出して小さな一つの空地を作り、短い棒で大きな箕(み)を支え、小米を撒きちらしておきます。小鳥が食いに来た時、わたしは遠くの方で棒の上に縛ってある縄を引くと、小鳥は箕の下へ入ってしまいます。何でも皆ありますよ。稲鶏(いねどり)、角鶏(つのどり)、※[「孛+鳥」、鴣(のばと)、藍背(あいせ)……」


そこでわたしは雪の降るのを待ちかねた。閏土はまた左(さ)のような話をした。


我们那时候不知道谈些什么,只记得闰土很高兴,说是上城之后,见了许多没有见过的东西。


第二日,我便要他捕鸟。他说:


“这不能。须大雪下了才好。我们沙地上,下了雪,我扫出一块空地来,用短棒支起一个大竹匾,撒下秕谷,看鸟雀来吃时,我远远地将缚在棒上的绳子只一拉,那鸟雀就罩在竹匾下了。什么都有:稻鸡,角鸡,鹁鸪,蓝背……”


我于是又很盼望下雪。


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