1级読解の練習(4)
スピーチをするとき「ぜったいにあがるまい」と思うとよけいあがる。好きな人の前で、ふつうに振る舞おうとすればするほど、動作や言葉がぎこちなくなる。そういうことがよくある。懸命に努力しているのに、かえって結果がわるくなるのはなぜだろうか。
それは自然に反するからである。たとえば人前でしゃべり慣れていない人は、あがって当然である、( ① )「あがるまい」とする。自然の法則に逆らうから、かえって結果はわるくなる。これを「努力逆転の法則」という。
努カはただすれば報いられるものではなく、効果があるように工夫をしなければならない。ではどのように工夫するか。まず意志を捨てることである。「あがるまい」というのは意志だ。そのような意志をもってもあがるのは、意志とは別に「あがる自分」を想像しているからなのである。
( ② )。だからいくら強固な意志をもっても、心の奥底ではそれとは反対の自分を想像してしまう。そして想像のほうが勝ってしまうのである。
意志をもつことは簡単だ。「きょうからタバコをやめよう」と思うのは意志である。③意志をもつにいたった理由もきわめて理にかなっている。「タバコは健康によくない」「金銭的にもバカにならない」「他人を不愉快にする」「アメリカのエリートは吸わない」「やめれば女房も子供も喜ぶ」。これだけ立派な理由があって、確固たる意志を固めれば、やめられそうなものだ。
だが一服する自分のリラックスした姿を想像したとき、もうタバコに手が出ているのである。いくら意志を強固にしても想像には( ④ )。他のことについても同じことがいえる。いくら努力しても結果の出ない人は、努力する意志があることはまちがいないが、⑤想像でそれを台無しにしているのだ。
人前であがらない最良の方法は「あがるまい」という意志を捨てることだ。あがって当然なのだから「きっとあがるだろう」でいいのである。ただし、そのあとでこう付け加える。「あがるけれども、きっとうまくいく」。これなら精神の緊張がほぐれるから、あがってしどろもどろながらも、人から好感をもたれる自分が想像できる。人生すべからくこの方式でいけばよい。 (川北義則『逆転の人生法則 目からウロコが落ちる87の視点』PHP文庫より)
(注1)ぎこちない:不自然で、なめらかでない
(注2)しどろもどろ:話し方が乱れている
【問1】( ① )に入る言葉はどれか。
1 といっても 2 としたら 3 ことに 4 にもかかわらず
【問2】( ② )に入る文はどれか。
1 意志と想像が争うとき、いつも負けるのは想像である。
2 意志と想像が争うとき、いつも勝つのは想像である。
3 意志をもつことと、想像することを同時に行うことは自然に反する。
4 意志をもつことと、想像することは実は同じことである。
【問3】③「意志をもつにいたった理由もきわめて理にかなっている」とはどういう意味か。
1 タバコをやめようという理由がわかりやすくてもっともだということ。
2 タバコをやめようという理由が立派すぎるのではないかということ。
3 タバコをやめようという理由の中に納得できないものがあるということ。
4 タバコをやめようという理由の申に合わないものが少なくないということ。
【問4】( ④ )に入る言葉はどれか。
1 かたくない 2 かなわない 3 かねる 4 かける
【問5】⑤「想像でそれを台無しにしている」の例としてあわないのはどれか。
1 タバコを吸ってリラックスした姿を想像した。
2 タバコを吸えず、イライラして仕事に集中できない姿を想像した。
3 あがってしどろもどろになってしまうところを想像した。
4 しどろもどろになりながらも、人から好感をもたれる自分を想像した。
【問6】筆者が言いたいことは何か。
1 よい想像ができれば、結果がでてくる。
2 想像を努カで変えれば、結果もでてくる。
3 努力する意志がなくても、想像は変えられる。
4 努力する意志があって、想像力をつければ結果はでない