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自動詞・他動詞・使役形に関する考察

作者:吉川 武…  来源:本站原创   更新:2004-5-17 22:34:00  点击:  切换到繁體中文

 

 
 自動詞、他動詞、受身、使役というのは ボイス(Voice 態)に関する用語である。
☆有対動詞・無対動詞
☆使役の構文 ヲ使役文 ニ使役文
☆自他の対応のある他動詞と自動詞の使役形の使い分け
☆構文上の要請
☆意志性からみた使役文

☆有対動詞・無対動詞

ある動詞は「立つ(自動詞)-立てる(他動詞)」のように自動詞と他動詞が対応している。これを有対動詞と言う。その自動詞の方が有対自動詞で、他動詞の方が有対他動詞である。
また「歩く(自動詞)」や「読む(他動詞)」のように対応する他動詞や自動詞を持たない動詞がある。これを無対動詞と言う。「歩く」は無対自動詞で、「読む」は無対他動詞である。これをそれぞれの使役形とともに表にすると、次のようになる。
 
  自動詞 自動詞の使役形 他動詞 他動詞の使役形
有対動詞 立つ 立たせる 立てる 立てさせる
無対自動詞 歩く 歩かせる    
無対他動詞     読む 読ませる

☆使役の構文

使役の構文について確認しておこう。
他動詞の使役文
「学生が本を読む」ということを先生が命じるとすると、
先生が 学生に 本を 読ませる。
となる。「読ませる」は「読む」の使役形である。「学生」は「学生」となる。「本を」はそのままである。
自動詞の使役文
「子どもがおつかいに行く」ということを親が命じるとすると、
親が 子どもに おつかいに 行かせる。
あるいは 親が 子どもを おつかいに 行かせる。
となる。「行かせる」は「行く」の使役形である。「子ども」は「子ども」あるいは「子ども」となる。「子ども 行かせる」をニ使役文、「子ども 行かせる」をヲ使役文と言う。自動詞の使役文にはニ使役文とヲ使役文があるわけである。ただし、動詞によってはヲ使役文しか用いられない場合もある。(『日本語文法入門』p.192)

☆自他の対応のある他動詞と自動詞の使役形の使い分け

立てる」と「立たせる」をどう使い分けるのか、「並べる」と「並ばせる」をどう使い分けるのか。つまり、「有対他動詞」と「有対自動詞の使役形」の使い分けはどうなっているか、という問題である。この問題は非常に難しい。「立てる」「立たせる」と「並べる」「並ばせる」を例に考察してみたが、明白な結論は出なかった。
問題となる形の位置を体系の中で確認しておこう。見やすくするため、左側に自動詞、他動詞をまとめて置き、右側にそれぞれの使役形をまとめて置く。
  自動詞 他動詞 自動詞の使役形 他動詞の使役形
有対動詞 立つ 立てる 立たせる 立てさせる
並ぶ 並べる 並ばせる 並べさせる
これらの形を使った次のような文が考えられる。
他動詞文 ヲ使役文 ニ使役文
子どもを立てる 子どもを立たせる 子どもに立たせる
子どもを並べる 子どもを並ばせる 子どもに並ばせる

次に、これらの文の適否を検討してみよう。
「子どもを立てる」はおかしい。「子どもを立たせる」ならいい。「子どもに立たせる」は子どもに何かを立たせるということか。ちょっとおかしい。
「子どもを並べる」はいい。「子どもを並ばせる」もいい。「子どもに並ばせる」は子どもに何かを並ばせると言っているようだ。次に検討する。
それで、こうなる。

他動詞文 ヲ使役文 ニ使役文
子どもを立てる 子どもを立たせる ?子どもに……立たせる
子どもを並べる 子どもを並ばせる 子どもに……並ばせる
「子どもに……並ばせる」とあると、子どもに何かを並ばせるという文、例えば「子どもに机を並ばせる」という文の一部のように見えてくる。
子どもに机を並ばせる
子どもに机を並べさせる 子どもが机を並べる
子どもに机を並べさせる」なら「子どもが机を並べる」から導き出された使役文であることがはっきりするが、「子どもに机を並ばせる」は何から導き出された文だろうか。 検討を要する課題である。
上に見たように「立てる」と「並べる」では使用できる場合が違う。使用できる場合は次の通りである。
他動詞文 ヲ使役文
  子どもを立たせる
子どもを並べる 子どもを並ばせる

「浮かべる(他動詞)」と「浮かばせる(自動詞の使役形)」では次のような用例がある。
浮かべる
(他動詞)
湖に小舟をうかべて、……
おさらに みずを いれ、1えんだまをうかべる
水に黒・赤・青などの色をうかべてもようを作ります。
目に涙をうかべて、……
浮かばせる
(自動詞の使役形)
海にお船をうかばせて、行ってみたいなよそのくに。
池にタイヤをうかばせて遊ぶ。
目に涙をうかばせて涙声ですがる。
瞳に悲哀の色をうかばせて……
これを見ると、「湖[海]に船を~」の例も、「目に涙を~」の例も「浮かべる/浮かばせる」とゆれていることが分かる。

☆構文上の要請

「彼女は 部屋に入ってきた」という文の中にそのときの彼女の状態を表す語句「胸がどきどきする」を入れて1つの文にしたい。「彼女は 胸がどきどきする 入ってきた」では適切な文にはならない。主格を「彼女」に統一するために「胸がどきどきする」を「胸をどきどきさせる」と変換しなければならない。さらに、これが文の途中であることを示すために「胸をどきどきさせて」とする。すると、
彼女は胸をどきどきさせて部屋に入ってきた。
という文になる。このように文法にかなった文にするために構文を整えることを 構文上の要請という。
この例では「胸がどきどきする」を「胸をどきどきさせる」とした。自動詞をその使役形にしたのである。次に同様の例を挙げる。

自動詞 使役形 例文 備考
輝く 輝かせる 希望に瞳を輝かせて元気よく返事をした。 対の他動詞はない
弾む 弾ませる 彼は息を弾ませて入ってきた。 対の他動詞はない
なびく なびかせる 馬がたてがみをなびかせて走っている。 対の他動詞はない
響く 響かせる 汽車が汽笛を響かせて進んできた。 対の他動詞はない

☆意志性から見た使役文

使役の構文は「Aが Bに ~させる」が基本である。
Aの動作、Bの動作が意志的なものか、無意志的なものかによって次の4通りの場合が考えられる。

  B意志 B無意志
A意志 先生が学生に本を読ませる。
あの店は客にうまいものを食わせる。
母親が赤ちゃんにミルクを飲ませる。
落語家がお客を笑わせる。
A無意志 阪神が巨人を優勝させた。 彼は不注意で子どもを死なせた。
先生が長い話で子どもを疲れさせた。


 

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