秋も半ばを過ぎていた。部屋の中にいると、さすがに涼しいが、日向(ひなた)に出ると、眠くなるほど暖かい。庭の木々はおおかた赤く色づき、中には葉を落とし始めたものもある。
ひばの垣根の傍らの花壇には、白や黄の小さな菊が、日光に浸りきって、ひっそりと光って咲いている、空は高く澄み渡り、ところどころに白い雲の塊が軽くふんわりと浮かんでいる。ついこの間までは、模様のようにたくさん群れ飛んでいた赤トンボも、残り少なになり、その為か中空(ちゅうくう)が急に広くなったような気がする。どこの学校で運動会でもやっているのか男女の生徒の叫び声が、かすかな木魂(こだま)をよんで響きわたっている。ほんとに遊ぶなら今のうちだ…
もうしばらくすると、お天気が崩れて、毎日、雨やみぞれが続き、それから白い雪が降りだして、来年の四月ごろまでは、深い雪の中に閉じこめられて暮らさねばならないのだ。遊ぶなら今のうちだ……
石坂洋次郎(いしざかようじろう) 「女同士」
作者紹介:
石坂 洋次郎(1900~1986)小説家。青森県生まれ。慶応大学国文科を卒業。昭和2年の処女作「海を見に行く」から「若い人」、「麦死なず」で作家的地位を確立し、昭和14年には上京して文筆生活に入る。以後、「暁の合唱」、「青い山脈」、「石中先生行状記」、「日の当たる坂道」などの通俗小説を続々と新聞、雑誌に発表した。作品は総じて明るく開放的で、素材は主に自己の生活体験に基づく庶民の生活であった。作品は他に「若い人」、「丘は花盛り」、「あじさいの歌」などがある。
雪国的秋天
秋已过半。人呆在屋竟觉得有点儿凉,走到外面太阳底下,还是暖洋洋的,令人昏昏欲睡。院中的树木已大多枝叶变黄,也有一些已经开始落叶了。
扁柏篱笆旁的花坛里,白色、黄色的小菊花沉浸在阳光中,静静地绽放着。天空明净高远,雪白的云团,轻轻地,随处漂浮着。前不久还图案般成群结队地飞来的红蜻蜓,已所剩无几,也许正是这个原因吧,让人觉得天空豁然开朗起来了。好象是哪儿的学校在开运动会,男女学生的叫喊声引来若有若无的回声,传出老远去。真所谓要游玩就在今朝……。
因为再过一阵,天公就不作美了,每天不停地下雨、雨夹雪,然后便是白雪纷飞,一直到明年四月份,只得困顿于厚厚的积雪中打发时光了。因此,要游玩就在今朝……。
石板 洋次郎 《女士们》
作者介绍:
石板 洋次郎(1900~1986)小说家。青森县出生。庆应大学国文科毕业。自昭和2年处女作《看海去》发表以来,以《年轻人》、《长生麦》等作品确立了其作家的地位,昭和14年进京,开始了笔墨生涯。之后,在报刊杂志上接连发表了
《清晨的合唱》、《青色山脉》、《石中先生行状记》、《向阳的坡道》等通俗小说。总的来说其作品明快、开放,取材于基于自身体验的大众生活。作品还有《年轻人》、《鲜花盛开的山冈》、《绣球花之歌》等。