自然の公約
三月の声を聞くと、自然は正直なもので、目に見えて春めいてくる。秋枯れの草葉(くさば)を、いくらかでも冬の間の保温にと、そのままにしておいたのが、急にむさくるしくなった。取(と)り除(の)けると、その下に新しい芽がニョキニョキと土の中から出ている。あるべき所に、あるべき生命が、約束をたがえず登場(とうじょう)してくれるのは、やはりうれしい。踏まないように、目印(めじるし)の札を立てておいたが、約束通り二葉(ふたば)が出てきた。その家の主人が忘れていたところにも、自然の公約をわすれず春の芽(め)が吹いて出た。
荒垣 秀雄 「天声人語」
大自然的承诺
大自然是诚实的,一听到三月的声音,便将一片春色渐渐地展现在我们的眼前。考虑到在严冬里多少能起点保温作用,秋日里的枯草败叶被保留着没去收拾,可现在一下子就显的脏乱不堪了。拨开一看,新鲜的嫩芽已然从泥土中勃然挺起。看到该出现的生命,在应该在的地方如期而至,不由得欣喜异常。为防人践踏,草地旁树着警示牌,小草也不负所望地伸出了双叶。其实,就连被那家主人遗忘的地方,春芽也没忘记大自然的承诺,破土而出。
荒垣 秀雄 《天声人语》