壁から折りたたみベッドを引き出すと、ジミィは壁の羽目板をずらして、ほこりにまみれたスーツ·ケースを取り出した。ケースを開けて、東部最高ともいわれる金庫破り道具一式をほれぼれと見つめた。これさえあれば何でもできる。特別に作った鉄製の道具で、どれも最新型だ。ドリル、ペンチ、曲げ柄ドリル、バール、クランプ、錐などで、様々な大きさ、用途のものが揃っていた。二つ三つはジミィ自身が作った発明品で、このことを誇りに思っていた。××ってところで作ってもらったときには、九〇〇ドル以上かかったものだ。ちなみに××っていうのは、そういう手合いのためにいろいろと作ってくれるところだ。
半時間後、ジミィは階段を下りて、喫茶店に戻っていた。そのときには、趣味のいい、サイズのあった服を着ていて、スーツ·ケースのほこりもちゃんと払って、手にしっかり握りしめていた。
「やらかすのか?」とマイク·ドーランはにやにやする。
「俺が?」とジミィはしらばっくれて、「何のことですか。わたくし、紐育腐食菓子朽木小麦合併会社から来たものですが。」
この自己紹介はマイクをとても喜ばせたから、その場でジミィにミルク·ソーダをおごった。ジミィは決して《きつい》酒に手をつけなかったのだ。
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