いかなる理由であれ、家族、特に夫婦が別々に暮らすことは決して望ましいことではない。とはいえ実際には、夫の地方転勤に際して家族共々転居するという例はむしろ少なく、夫だけが新しい任地に単身赴任し、家族は今までの場所で今までの生活を続けるという例の方が、はるかに多い。その理由として、共稼ぎの妻の仕事の都合や、親の世話や介護の都合などが挙げられる場合もないわけれはない。だが、この現実は何と言っても日本の学校制度、受験制度、さらに教育現場の実態などからみた子供の転校の難しさと、最も深い関係があると思われる。
* ~であれ:~であっても 共々:いっしょに とはいえ:とは言うけれども
問:何が「子供の転校の難しさと、最も深い関係がある」のか。
1. 夫が地方転勤になること。
2. 夫が単身赴任せざるを得ないこと。
3. 妻に仕事や親の世話などの都合があること。
4. 受験戦争が厳しい上に、いじめなどの問題があること。
正解:2
私が書く小説には、しばしばサラリーマンの主人公が登場する。したがって、小説の舞台も、会社や家庭であることが多い。しかし、作家仲間や出版社の人達にも信じられないといった顔をされるのだが、実は、わたしには家庭を持った経験もなければ、会社員生活をした経験もない、全く実際の経験がないことを、さもよく知っているかのように書く。よくそんなことができると怒られそうだか、そこは会社員の友人たちから得る情報と、わたし自身の想像力とで輔っているというわけである。
問:だれが「怒られそう」なのか。
1. 筆者。
2. 作家仲間や出版関係者たち。
3. 会社員の友人たち。
4. 読者。
正解:1
日本は昔から天災の多い国であった。火山も多ければ、地震もある。夏の終わりから秋にかけては、毎年大小幾つもの台風に見舞われ、大雨が降れば、流れの速い川はたちまち氾濫して、周囲の田畑を読み込み。冬は冬でまた逆に大陸からのからっ風で空気が乾燥し、毎年あちこちで山火事が発生する。......
天災の多かったことは日本人の心の中に、物事をすぐ忘れすぐ諦めるという癖をつけてしまったように見える。天災に打ち勝つためにはどうすればよいかを考え抜き、粘り強く工夫を重ね、根本的な対策を立てる代わりに、天災だから仕方がない、失ったもののことはさっぱり諦めきっぱり忘れて、もう一度新しく一からやり直すほかないと考えて、自分を納得させてしまう気持ちである。このようにして、打ちのめされてもまたやり直し、毎回同じことを繰り返していく。その気持ちはさらに、遠い将来のことなどあまり深く考えずに運を天に任せ、何か起こった時には、その都度その都度、その場その場で安易な一時しのぎの対策を講じて、それで済ませてしまうという一種の無責任さを植え付けてしまったようである。
* からっ風:水分の少ない強い季節風。 打ちのめす:徹底的な打撃を受ける。
一時しのぎ:そのときだけ何とかする。 講じる:する。
問1:何が「読み込む」のか。
1. 台風。
2. 周囲の田畑。
3. 流れの速い川。
4. 火山や地震。
問2:何が「仕方がない」のか。
1. 日本は天災が多いこと。
2. 日本に住んでいること。
3. 被害を受けたこと。
4. なくしたものを諦めること。
問3:何が「繰り返していく」のか。
1. 台風。
2. 山火事。
3. 日本の四季。
4. 日本人。
問4:何が「植え付けてしまった」のか。
1. 台風や地震などの天災。
2. 物事をすぐ諦め、すぐ忘れる癖。
3. 粘り強く重ねる工夫。
4. その場限りの一時的な対策。
正解:3、3、4、2
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