おもしろいことに、セイディはマイルズを信用できるとまだ完全に確信しているわけではないようですね。最初のダイアログで、けがをみせないように、彼女は彼から顔を隠すようにしていましたよね。ここでも、マイルズに、シャワー中に滑ったと言うことによって、けがの原因を隠そうとしています。彼女の経験したトラウマは、まだ記憶にとても新しく、知らない人や、ちょっとした知り合いに話す気になれないのです。まだ自分でも正面からまともに取り組んでいないのですから。問題は、彼女の親しい友人たちというのは一緒に働いていた人たちだということ。仕事関係以外の人で、彼女の身に起きたことを話せる相手がなく、マイルズがその相手であるという確信もないのです。
大きな痣
Sadie: あなたのお部屋は本当に素敵ね、マイルズ。前にお邪魔したことはなかったと思うわ。
Miles: あれ、なかったかな?そうかもしれないね。スケジュールがちょっと合わないからだろうね。君と出会うときはいつも、私は仕事帰り、君は仕事へ出かけるところで忙しいから。
Sadie: まあね、今はずっと時間があるわ。この間、仕事を辞めたから。
Miles: ああ、そうか。土曜日に会ったときにそう言ってたね。あの日、君はあまり具合が良くなさそうだったな。もう良くなったかい?
Sadie: ええ…ええ。今は順調よ…
Miles: ふーん…セイディ、詮索するつもりはないけど、目の下の大きな痣が、仕事を辞めたことと関係あるの?
Sadie: これ?ああ、何でもないわ…この間、シャワーを浴びていて滑っちゃったの。実を言えば、同じ土曜日に。ランニングから帰ってきてね。思ってたより疲れていたんでしょうね…それでまあ、間抜けな話なんだけど、シャワーを浴びていてバランスを失っちゃって…
Miles: なるほど。
Sadie: ええ。いえ、本当に何でもないのよ。深夜に働き続けるのがちょっとイヤになっただけなの。変わりたかっただけ。
Miles: まあ、悪いことじゃないよ。
Sadie: マイルズ。ごめんなさい。もうこんな時間だったのね。私、ちょっと用事があるの。また今度お邪魔してもいいかしら?
Miles: もちろんさ。私も今は時間がたっぷりあるからね。会社がしばらく医療休暇をくれたんだ…本当に気分は大丈夫かい?急に顔色が悪くなってきたみたいだけど。
Sadie: 大丈夫。本当よ、マイルズ。
Miles: わかったよ。とにかく、ほら、バスケットをありがとう。わざわざ来てくれるなんて本当に親切だよ。
Sadie: どういたしまして。さよなら。