かつて、モノは貴重だった。大量生産大量消費の現代生活が始まるまで、ほんのつい最近まで、モノは使い切るまで大切にされ、そのモノの用途が終っても別の形 で再利用したりして、それから処分された。食品も、米粒一つまで残さず食べるようにしつけられた。モノを使い切ってから捨てて、それから新しいものを手に 入れる循環がなされていた。( ① )、“もったいない”が美徳だった。
高度経済成長期には新しい電化製品が次々に現れ、“新し い”という理由でモノが買われて行った。新しいもの=いいモノだったから、古いモノは惜しみなく廃棄されていった。新しい便利さ、新しい機能、新しい流行 を取り入れるために、モノが次々に暮らしに入ってきた。そのうち、バブル期の「ほしいものが、ほしい。」(西武百貨店)というコピーに表されるように、必 要なモノでは満たされてもモノを買うことそのもの、つまり( ② )そのものが求められるようになった。
そうして、消費に慣らされた私たちは、今に至ってもモノの 呪縛から逃れられなくなっている。必要だからほしいのではなく、買うためにモノがほしい、という消費のしかたが定着していると言える。その結果、モノの消 費のスピードをはるかに超えてモノが増殖し、私たちの暮らしはモノであふれるようになってしまった。
どうも、③モノが貴重な時代からモノが溢れる時代までの変 化があまりに急すぎたらしい。私たちは④“( a )”という美徳の名残と、( b )という新しい事態のあいだで、困り果てている状態なのだ。そのジレンマから何とかして逃れなければならない。このまま では、いつまで経ってもモノの呪縛から解き放されない。
エコロジーや節約生活が注目されているように、モノを大切にして不要なものは買わないことが、この呪縛から逃れる方法なのだろうか。いや、買うこと=モノ を増やすことをやめてしまうのは、あまりにさみしい。入ってくるモノをなくせばモノはいずれ減り、すっきりとしてくることは明らかだ。でも、よほどスト イックな人でもない限り、⑤それで楽しく暮らせるとは思えない。少なくとも、筆者は嫌だ。
好きなモノをもつのは楽しいし、新しい洋服を着れば嬉しくなる。テレビや新聞があっても、週刊誌も読みたい。情報誌もチェックしたい。目の前にあるどうし てもほしい食器を買わないことで、なにかいいことがあるとは思いたくない。家計が楽になっても暮らしが楽しくないのは困る。
自分に合った楽しく豊かな暮らしを( ⑥ )、“もったいない”からモノの増殖からも逃れられる、新しい暮らし方はないものだろうか。どうしたら見つかるのだろうか。
(注1)呪縛:何かによって縛られ、動けないこと
(注2)ストイックな:感情に動かされない、禁欲的な
問1:( ① )に入る言葉として適当なものはどれか。
1. のみならず 2. だとすれば 3. しかしながら 4. だからこそ
問2:( ② )に入る言葉として適当なものはどれか。
1. 廃棄 2. 消費 3. 増殖 4. 呪縛
問3:③[モノが貴重な時代からモノが溢れる時代までの変化]の説明として正しいものはどれか。
1. かつて、モノは貴重だった。大切にされた。やがて、バブル期にはいり、モノが大量に購買された。そして、高度経済成長時代に入り、今新たしいモノが極めて豊富になってきた。
2. モノがとても珍しかったので、使い切った。やがてモノがだんだん生活に入り込み、古いモノが捨てられていった。だが、モノがまた再び利用され、今極めて豊富になってきた。
3. 以前はモノがないから、使い切るまで使った。やがて多量生産多量消費の時代にいり、モノは買れたり、捨てられたりした。今、新しいモノを買う速が落ちるが、モノがまだ依然として豊富である。
4. 以前はモノがないから、使い切ってから捨てられた。やがて多量生産多量消費の時代にいり、モノがだんだん買い込まれ、人々の生活に入りこんだ。バブル期を経ていたが、モノが極めて豊富であるから、購買をやめようとはしない。
問4:④「“( a )”という美徳の名残と、( b )という新しい事態のあいだ」とあるが、(a)と(b)に入る言葉の正しい組み合わせはどれか。
1.a:もったいない b:モノの増殖
2.a:モノの増殖 b:もったいない
3.a:もったいない b:モノの消費
4.a:再利用 b:モノがほしい
問5:⑤「それ」は何を指しているか。
1.節約、家庭の収支に余裕がある
2.モノが減った
3.いらないモノは買わない
4.モノを大切にして捨てない
問い6( ⑥ )に入る言葉として適当なものはどれか。
1. しないまでも 2. しつつ
3. するといったところで 4. するしないにかかわらず
問い7 文章中の二重下線の「モノの呪縛」とはどういう意味か。
1.節約して買わず、買ったモノは使い切るまで捨ててはいけないこと。
2.必要だから買うのではなく、買うためにモノがほしいこと。
3.モノをもったいないと思い捨てられないが、買うこともやめられないこと。
4.モノを買いすぎてモノが溢れてしまっていること。
本期翻译答案与讲解:4 2 4 1 2 2 3