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(カラオケ スナックで)
長谷川 :李さん、演歌がうまいですね。
ホステス:ほんとに。中国の方と思えないぐらい上手よ。ねえ、木下さん。
李 :そうですか?ほめていただいたのは初めてですよ。じゃ、今度は、今とてもはやっている歌を歌います。あっ、これデュエットだから長谷川部長も一緒にどうですか。
長谷川 :いや、最近の歌はダメなんですよ。
李 :あっ、そうですか。じゃ、ボク、みゆきさん(ホステスの名前)と歌います。
長谷川 :(一向に楽しい様子も見えない)
木下 :(困った顔)
(数日後、李さんと同僚の高橋さんと横山さんは三人でお酒を飲みに行きました。そこで、この間のカラオケスナックの話になりました。)
横山:長谷川さんの接待のために行ったのに、李さんが自分だけ楽しんでたって、課長、怒ってらしたわよ。
李 :えっ!ほんとに?おかしいな。長谷川さん、帰るときに、「今夜はとても楽しかったです」っておっしゃってくださったよ。
高橋:それは、日本の社会においてはタテマエっていうもんだよ。李さん。
李 :タテマエか…。そういえば、この間お金集めたでしょ。
高橋:田村さんの結婚のお祝いのこと?
李 :うん。田村さんの結婚のお祝いの回覧が回ってきたとき、みんなが何も言わないで同じようにお金を出すのを見て、僕、驚いちゃった。あれもタテマエ?
横山:それは違うわ。同じ部の人がみんな出していれば、やっぱり、あたしもみんなと同じようにするわ。そのほうが、摩擦が起こらないか。
李 :それは、自分に自信がないからでしょう。
横山:まっ、失礼ね。李さん、ときどき失礼なことをするわよ!たとえば、この間、営業一課で飲みに行ったとき、先に帰っちゃったでしょ。あの後、みんな白けちゃったのよ。
李 :だって、僕、お酒、嫌いなんだ。
高橋:李さん、本音は僕だって同じだけど、それが会社のつきあいってものだよ。僕も去年はそうだったけど、「新人類」なんて陰で言われちゃって…。
李 :へえ、冷たくされたの?
高橋:まあね。今は違うけど。
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