1级読解の練習(12)
われわれは、よく、「体が覚えている」とか「手が覚えている」という言い方をすることがある。
意識的にものを考えるときには、「頭を使う」という言い方をするように、頭、脳を使って考えるが、人の心の働きには、脳の活動だけで説明しきることのできないものがたくさんある。(a)
文字は手で覚えるというのも、よく言われることだ。子供の頃、文字を覚えるのに、同じ字を何回も書かされたという覚えは、( ① )だろう。(b)
そうして覚えた字は、忘れていても、書いてみると思い出せることがある。思い出してから書くのではなく、書くことによって思い出すということが起こるのだ。(c)
例えば、人が書いた漢字を見て、間違っているような気がするのに、何処がどういうふうに間違っていると、はっきり指摘できないことがあったとする。そんなとき、②たいていの人は、その文字を紙に書いてみようとするのではなかろうか。(d)
手がちゃんと覚えていたり、頭で考えなくても正しい字が書け、人の書いた字と比べて、「あっ、ここが違う」と指摘できたりする。( ③ )、妙に意識してしまうと、いつもは自然に書ける字が、かえって書けなくなり、思い出せなくなる時がある。
(匠英一「無意識という不思議な世界」 河出書房新社より)
問1( ① )に入る適当なものを選びなさい。
1 誰しもあること 2 誰しもないこと
3 誰かに分かること 4 誰にもあることではない
問2②「たいていの人は、その文字を紙に書いてみようとする」とはどうしてか。
1 文字を覚えるのに、何回も書かなければ覚えられないから。
2 人の文字より、自分の文字が自然できれいだから。
3 書くことによって、正しい字を思い出すことがあるから。
4 人が書いた字と比べて、自分の字の正しさを指摘したいから
問3 ③に入る適当な言葉を選びなさい。
1 その結果 2 その上 3 さらに 4 逆に
問4 次の文は(a)~(d)のどこには入るか。
例えば、記憶喪失になって、自分の名前や過去を忘れた人でも、車の運転は覚えていることがある。
1(a) 2(b) 3)(c) 4 (d)