人間は成長するにしたがい、何度も皮をむいて新しくなる。
この脱皮をさせてくれる助けはいろいろあるが、本はその大きなきっかけの一つである。あなたがある本と巡り会って、その中にある一つの言葉が、何か心にかかりながら、そのときは過ぎてしまう。何年かたってふと思い出し、「そうか、そういうことだったのか、ほんとだ、あの著者のいいたかったのは、こういうことなんだな。」とわかる、そのとき、あなたは一つの脱皮を成し遂げる。①そういうことが何度もいろんな本で行われると、その蓄積は次第に厚く深くなってゆくだろう。人生経験を積み重ね、それを裏打ちして自分にプラスしてゆくには、どうしても読書が必要になる。
( ② )、言葉をたくさん知ることが望ましい。わたしたちは、言葉を使って考えを組み立てる。③積み木の数は、なるべくたくさんでなければならない。さまざまな形のものも欲しい。本を読むことで、それらは幾つもできる気がする。口下手で、言葉をすぐ唇に上せられない(若いときはそういうことが多い)人も、頭の中に言葉がひしめいている。それでよいのだ。
(田辺聖子『読むことからの出発』講談社現代新書より)
【問1】①「そういうこと」とは何か。
1 ある本に巡り会ってその中の言葉が心にかかって、あるときふと思い出したこと
2 ある本の中の心にかかった言葉が何年か後に理解でき、成長したこと
3 人生でいろいろな経験をしながら、何度も脱皮したこと
4 若いときに口下手だった人が年をとって話せるようになったこと
【問2】( ② )に入ることばはどれか。
1 とにかく 2 ところが 3 それでも 4 しかしながら
【問3】③「積み木」はこの文では何のことか。
1 おもちゃ 2 読書 3 人生経験 4 言葉