▼日本は四季の国ではない。梅雨という雨期のある五季の国だと、俳人の宇多喜代子さんがかつて小紙に寄せていた。たしかに、入梅から明けるまで東京の平均は43日にわたる。嫌われがちな季節だけに存在感がある
▼曾经从诗人宇多喜代子那里收到一封信,里面写道日本这个国家并不只有四季,还有雨水充足的第五季---梅雨季。确实东京从梅雨季开始到结束,年平均持续43天。这是一个容易令人生厌的季节。
▼九州では大雨が続く。首都圏も随分降りこめられた気がするが、まだこれからが長い。住宅街を歩いていたら、湿気にのって梔子(くちなし)が匂ってきた。この花はいつも、甘く強い香で存在を告げる。見ると清楚(せいそ)な白が雨の中へ開いている
▼九州地区豪雨仍在持续,首都圈一带也下起了大雨,但梅雨季才刚刚开始而已。行走在住宅区大街上,栀子花香随湿气扑面而至。这种秀丽的白色花朵在雨中绽放着,以强烈的香气向外界昭示自身的存在。
▼気がつけば、梅雨時に見る花には不思議と白が多い。山法師(やまぼうし)、卯(う)の花、夏椿(なつつばき)、七変化の紫陽花(あじさい)にも白は多い。そして地面に目をやれば、ドクダミが暗がりに白十字の星を散らしている
▼细心留意之下,不可思议地发现梅雨时期的花大多以白色调为主。四照花、水晶花、红山紫茎、七色绣球花等基本是白色的。再往地面看去,鱼腥草像白色十字星一样散落在阴暗处。
▼先日は山形県のご高齢の読者から泰山木(たいさんぼく)の花が咲き始めましたと便りをいただいた。大きく開くこの花も神々しく白い。〈蕾(つぼみ)は白蝋(はくろう)/半開が白磁碗(わん)/満開時 紛(まご)うかたなき白牡丹(ぼたん)〉は泰山木を愛(め)でた堀口大学の詩の一節だ。震災から百日となる東北の被災地で、霊を慰める大輪もあろうと思う
▼前几天从山形县的老读者那收到一封来信得知,他那里的洋玉兰开始开花了。大大朵的洋玉兰花盛开时也是庄严的白色。喜爱洋玉兰的诗人堀口大学的诗中有一节“花蕾如白蜡,半开似白瓷碗,盛开时活脱一白牡丹”。311大地震已过百日,东北受灾地吊唁亡者时想必也会带上这种大白花吧。
▼梅雨という五つ目の季節は、煙る雨の中に盛んな命の営みを感じる季節でもある。だが、生きものや草木の旺盛も今年はどこか色あせる。梅雨が明けても、なお原発禍の暗雲は晴れやるまい
▼第五季节梅雨季,这是个繁盛的生命在烟雨之中默默耕耘的一个季节。但今年无论是动物还是草木的繁盛相比往年也褪色不少。即使度过了这个梅雨期,核泄漏灾害的阴云也不会散去。
▼〈かぶとむし地球を損なわずに歩く〉と宇多さんに頂戴(ちょうだい)した新句集にあった。思えば人間以外のどの生きものも、身ひとつの潔さで一生を終えるのだ。文明の功と罪を問う剣先は今、ひときわ鋭い。雨に流せる話ではなく。
▼宇多老师那里得到的一本新诗集里有一句“独角仙不会为了行走而损害地球”。想想除了人类之外的所有生物,哪个不是一身清白地终其一生?问罪文明功过的剑锋,如今只会越发锋利,不会像雨水流过一般轻轻带过了事啦。
中日对照