言わないでくれ、頼む
「商店街でぶらぶらしている佐千を正夫が見かけて呼ぶ」
正夫:佐っちゃん。
佐千:あっ、これ、うちの田舎から送ってきた京菜、お鍋に入れたらいいと思って、
ちょっと早めに来ちゃったんですよ。
正夫:あ、杏子、まだ病院なん…
佐千:あっ、聞いています。あの、あたし、どっか、その辺で時間をつぶしてきますんで、
見たい本とかもあるし。
「佐千がさっさと行ってしまう。正夫が後ろから追いついて」
正夫:佐っちゃんー。ま、お願いだ、佐っちゃん。さっきのこと、杏子には言わないで欲しいんだ。絶対に、絶対 に言わないで欲しいんだ。聞いてたろ、言わないでくれ、頼む。
佐千:そんなこと、言うわけないじゃないですか。
正夫:えっ?
佐千:言うわけないじゃないですか。あたしは、杏子の一番親友で、じゃ、それ、向こうはどう思ってるか分から ないんけど、あたし、そのつもりで付き合ってて、そんなこと言わないじゃん。それにお兄さんのことだって、正夫さんのことだって、正夫さんが思うより、ずっとあたし、正夫さんのことも正夫さんの気持ちも分かってるよ。なのに、そんなこと言うわけないじゃん。(佐千はすすり泣く)
正夫:ああ、ええ?佐…佐…佐っちゃん、俺なん…なん…何か、ごめんね。ま…ま…ま…
ハン…ハンカチ、ハンカチ、な、ない、あった。(言いながらポケットからハンカチを取り出し、佐千に渡す)
佐千:これ、何か、臭い。
正夫:洗ってない、しばらく。
佐千:えへへっ、
正夫:あー、佐っちゃん笑ってくれた、よかった。あー、よかった。
佐千:正夫さん、変。
正夫:そう、変?あー。
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