人物:黒川(40代、主婦) 滝沢(30代、主婦)
場面:子供を捜している滝沢を黒川がなだめる黒川:滝沢さんの奥さん!
滝沢:あら、黒川さん。こんばんは。
黒川:こんばんは。どうかなさったんですか?何か落し物でも?
滝沢:いえ。あの、うちの良助、見かけませんでしたか?
黒川:あら、良助くん、どうかなさったの?
滝沢:実は、プールにいったきり、まだ帰ってこないんです。
黒川:まあ。
滝沢:一緒に行ったお友達、もうとっくに帰宅しているそうなんですけど。
黒川:それはご心配ですね。
滝沢:ええ。あっちこっち探しているんですけど、見つからないんです。
黒川:ご主人は?
滝沢:今、交番に行っているところです。
黒川:大丈夫ですよ。きっと見つかりますよ。
滝沢:ええ。でも落ち着かなくて…。
黒川:お一人じゃ心細いでしょう。ご主人がお戻りになるまで一緒にお探ししましょう。
滝沢:すみません。一人でいると、どうしても悪いほうにばかり考えてしまって…。
黒川:大丈夫ですよ。うちの雅彦も小さい頃は遊びにいったっきり、なかなか帰ってこないなんてこと、しょっちゅうでしたもの。
滝沢:はあ。あの、これぐらいの男の子って、こんなことをよくやるものなんでしょうか?
黒川:そうですねえ。元気な子供ほど、そういうものらしいですよ。良助君も活発なお子さんですし。
滝沢:でも、今までこんなこと一度もなかったので、心配で心配で…。もしかして、川に落ちたんじゃないかとか、どこかで怪我をして動けないでいるんじゃないかとか…。それに、交通事故にでも遭っていたらと思うと、居ても立ってもいられなくて…。
黒川:あまり思い詰めないほうがいいですよ。もっと気を楽にしてくださいな。
滝沢:ええ。ですけど、最近、物騒でしょ?子供の誘拐事件が多いもので、まさか、うちの子も…。
黒川:まさか。考えすぎですよ。
滝沢:そうでしょうか?
黒川:そうですよ。とにかく、あまり思い詰めると、今度はおなかのお子さんにさわりますよ。奥さんお一人の体じゃないんですから。
滝沢:はい。(自分に言い聞かせるように)そうですね。
黒川:子供って、親が心配しているほど危なっかしいものではありませんから。
滝沢:はい。そうですね。
黒川:そのうち、ケロットして元気よく帰ってきますよ。
滝沢:ええ、そうだといいんですけど。
黒川:大丈夫です。きっと無事ですよ。