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(歌舞伎劇場で)
小林:李さんは今まで歌舞伎を見たことがありますか。
李 :いいえ、まだ見たことがありません。今日は初めてです。
小林:そうですか。
李 :日本の伝統文化はいろいろありますが、その中で、歌舞伎は今でも代表的なものの一つでしょう。
小林:ええ。人気のある出し物の時によい席はいつでも売りきれてしまいますよ。
李 :切符は高いですか。
小林:ええ、高いのは一万円以上もするんですよ。
李 :ところで、歌舞伎はいつごろから始まったんですか。
小林:江戸時代からです。
李 :前に歌舞伎についての本をちょっと読んでみたんですが、役者は男の人だけだそうですね。
小林:ええ、そうです。歌舞伎が始まったころは女の役者もいたんですが、今は男の人だけになりました。
李 :男の人なら、だれでも役者になれるんですか。
小林:いいえ、役者の家の子供しかなれません。
李 :じゃ、男の子がいなかったらどうするんですか。
小林:養子をもらうという方法もあります。日本の伝統文化を守るのも容易なことじゃありませんね。
李 :ほんとうに難しいですね。
小林:今日はお寿司を持ってきたんですが、いかがでしょうか。
李 :今ご飯を食べたところです。後でいただきます。ところで、観客はお弁当を食べながら、芝居の始まるのを持っていたりして、とても楽しそうな雰囲気ですね。
小林:ええ、中にはイヤホーンを耳に当てている人もいるでしょう。これは歌舞伎の解説を聞きながら芝居を見るもので、日本語のものと英語のものがあります。
李 :歌舞伎は日本人にとってもわかりにくいですか。
小林:ええ。歌舞伎には決まりがたいへん多くて、解説がなければわからないことも多いのです。あっ、幕が開きました。舞台の左側を見てください。そこは下座といって、歌舞伎の伴奏音楽を演奏するところです。舞台の上では、役者たちによって芝居が進行して行きますが…。
李 :役者が見えませんね。
小林:役者は花道から出てくるんです。花道が観客席の中に設けられ、役者の出入りが間近に見られるように工夫されています。
李 :切符を買う時は花道に近い席を選ぶとよいですね。
小林:ええ、そうです。
李 :舞台の場面の変化が速いですね。
小林:ええ、歌舞伎の舞台は回り舞台といって、次の場面に素早く移り変われるようになっています。ほかに顔の隈取りやかつらなども歌舞伎の特色です。
李 :これは中国の京劇とよく似ていますね。
(国技館で)
李 :わあ、すごい人ですね。
藤川:ええ、毎日満員ですよ。
李 :藤川さん、相撲は好きですか。
藤川:ええ、大好きです。相撲のテレビ放送は毎晩欠かさず見ていますよ。昨日は大関と横綱との対戦でしたが、あれはすごかった。思わず手に汗を握りました。
李 :藤川さんはときどき、相撲を見にいらっしゃいますか。
藤川:ええ、好きですから暇があったら見物にきます。
李 :相撲はいつもこの国技館で見られるんですか。
藤川:いいえ、一月から十一月にかけて、六場所あって、シーズンごとに興行の場所が変わるんですよ。
李 :そうですか。ここはほんとにいい席ですね。日本に来て、相撲が見られるなんて思ってもみませんでしたよ。こういう席の切符は普通じゃ、なかなか手に入らないでしょう。
藤川:そうですね。人気のある日本の国技だけに、よい席はすぐ売りきれてしまいますよ。
李 :そうですか。これほど土俵に近いと、力士の顔もよく見えていいですね。競技はもう始まっていますか。
藤川:いいえ、取り組みは今から始まるところです。
李 :派手な着物を着て土俵の上で動き回っているのはどういう人ですか。
藤川:あれは行司です。
李 :「行司」とは何ですか。
藤川:「行司」というのは力士の取り組みを見て勝負を判定する人です。
李 :どのように判定するんですか。
藤川:力士は立ち上がった以上は、足の裏以外の体のどの部分でも土に触れれば負けです。それから、土俵から出たら負けです。
李 :お相撲さんの地位はどう決めるんですか。
藤川:成績がよければ地位が上がります。もちろん負ければ逆に下がります。
李 :きびしい勝負の世界ですね。ところで、お相撲さんは相撲の前にどうして塩をまくんですか。
藤川:それは昔から伝えられた習慣で、いわゆる「清め」のためです。
李 :力士は普通の日本人よりずっと体が大きいですね。
藤川:ええ、力士は身長一七三センチ、体重七十五キロ以上なければいけないそうです。
李 :対戦のとき、体重の制限がありますか。
藤川:いいえ、相撲はレスリングやボクシングと違って体重制限というものがないから、やせた力士と山のように大きな力士が対戦することもあります。
李 :そうですか。「百聞は一見に如かず」の言葉とおり、今日はいい勉強になりました。どうもありがとうございました。
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