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横山:日本語科の王先生は学生たちに尊敬されていますね。
李 :ええ、王先生は授業には熱心だし、学生には親切だし、みんなからとても尊敬されています。
横山:李さんは王先生に教わったことがありますか。
李 :ええ、あります。一年生の時に日本語の発音と会話を教えていただきました。会話の授業ではいつも活発なやりとりが行なわれていました。
横山:王先生はよく学生をほめますか。
李 :ええ、成績がよかったらほめます。
横山:李さんも王先生にほめられたことがありますか。
李 :ええ、あります。勉強の態度がまじめで、成績がよかったというので、ほめられました。
横山:しかられたことがありますか。
李 :しかられたこともあります。
横山:何でしかられたのですか。
李 :同級生と口げんかをしてしかられました。
横山:どうして口げんかをしたんですか。
李 :ある日、掃除したばかりの教室に紙くずを散らかすので、私がきれいに掃けと言ったら生意気だと言ったんです。それで、口げんかになってしまいました。
横山:教室を散らかしたりするのはよくありませんね。
李 :ええ。でも、私も悪かったんです。言葉づかいが乱暴だったので、彼は怒ってしまったんです。
横山:丁寧に言えば、けんかにならなかったかもしれませんね。
李 :ええ。でも、次の日に仲直りしてお互いにそれからはけんかをしないことにしました。横山さんはけんかをしたことがありますか。
横山:けんかといえば、子供のころ、兄弟げんかをずいぶんしました。弟と妹をいじめてばかりいると言って、よく母にしかられました。今でも、ときどき昔のことが思い出されます。李さんは兄弟がありますか。
李 :はい、あります。
横山:何人兄弟ですか。
李 :私を入れて三人です。子供のころ、兄によく騙されたり、殴られたりしました。
横山:でも、兄弟げんかをしてしかられるのは、たいていお兄さんのようですね。
李 :ええ、兄のほうがいつも両親にしかられていました。私は末っ子だったから、特に甘やかされていたらしいんです。横山さんは今弟さんと妹さんをよく可愛がっているでしょう。
横山:ええ、高校生になる前までは、いつもけんかをしていましたが、高校の時、父に死なれて、暮らしが大変困ってしまいました。そのときから弟と妹に勉強を助けてやったりして、かわいがるようになりました。李さんも今お兄さんと仲がいいでしょう。
李 :ええ、私たちもおとなになってからは、一度もけんかをしたことがありません。
……
横山:おや、李さん、どうしたんですか。あなたのその手の傷は。
李 :その傷ですか。
横山:そうです。ずいぶんひどい傷ですね。
李 :ええ、この間、バスに乗ろうとした時、後ろからおされて転びました。これはその時の傷です。
横山:それは危なかったですね。
李 :ほんとうですね。上海のバスは込合いますから気をつけないと大変なことになります。私がけがをしたのはこれで二度目です。
横山:前にもけがをしたことがありますか。
李 :ええ、前には、バスの中で誰かに足を踏まれました。ちょうどその時、サンダルを履いていたので、血がたくさん出て、しばらくは歩けませんでした。それに、その日、帰る途中、大雨に降られてほんとうに困りました。
横山:それはひどい目に遭いましたね。
李 :ええ。ところで横山さん、あなたは何かひどい目に遭ったことがありますか。
横山:ええ、ありますよ。まだ日本にいたころのことなんですけど、込んだ電車の中ですりに財布をすられました。
李 :そうですか。それは災難でしたね。まったく油断ができませんね。ほかに、何かこわい目に遭ったことがありますか。
横山:こわい目ですか。
李 :ええ。
横山:ありますよ。ある日、私は一人で郊外をドライブしている時に、ヒッチハイクをしている若い二人連れを乗せたんです。そうしたら、なんと、それは悪者だったんですよ。
李 :ええ!それで?
横山:ええ、ナイフを突きつけられて、あり金を全部取られてしまったんです。
李 :へええ、はじめ、あやしいとは思わなかったんですか。
横山:とてもそういうふうには見えませんでしたからねえ。
李 :そうですか。ほんとうに危なかったですね。
横山:ええ、それからは、知らない人は絶対に乗せないことにしました。
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