形容詞を意味の面から分けると、大きく2つに分けられます。
「属性形容詞」とは「物や人の性質を表す」、例えば、「大きい、重い、速い、冷たい、丸い、きれいだ、にぎやかだ、おとなしい」などです。
「感情形容詞」とは「人の感情を表す」、例えば、「悲しい、うれしい、苦しい、いやだ、好きだ」など。それに、感覚の形容詞があります。例えば、「痛い、かゆい、まぶしい、眠い」など。これらもそのような感情や感覚の持ち主を「形容」しているわけです。
* 感情?感覚形容詞は、その表す意味の違い以外にも、属性形容詞との大きな違いがあります。一つは、主体の人称制限です。もう一つは、対象の「(名詞)が」という補語をとり、「(名詞)は(名詞)が~」の形をとることです。
一、 主体の制限
感情·感覚形容詞は、平叙文では、表せるのは話し手の感情や感覚に限られています。疑問文では聞き手の感情·感覚を問うことができます。
例:私は寂しいです。
あの人は寂しいです(か)?
頭が痛いです。
どこが痛いですか。
* その他の人、いわゆる第三人称については、文末に何らかの表現をつけ加えて、話し手の推量·伝聞によるものであるか、話し手の「説明」であることを示すなどのことをしなければなりません。
例:彼は寂しいらしいです/寂しいそうです/寂しいでしょう/寂しいのです
彼はふるさとを恋しがっています
①この「-らしい?そうだ?だろう」は動詞など広く述語につく形式です。話し手が「彼」の気持ちを推量していることを示します。
②次の「-のです」は「説明」と言われるものです。
③「-がる」は、この感情形容詞や「[ 動詞-たい」(希望を表す)などの、人の気持ちを表す表現に接続して、それが外に現れていることを示す接辞で、逆に言えば、この「-がる」がつくことが感情形容詞であることの証拠の一つになります。ただし、例外はあります。
この「主体の制限」がなくなる場合があります。
まず、小説などでは、作者が登場人物の内面に入り込むことができるので、三人称でもこれらの形容詞を使うことができます。
例:和夫は、それを聞いて、とてもうれしかった。
二人は、今、のどから手が出るほど金がほしい。しかし、この金に手をつけることはできないのである。
また、連体修飾の場合は、文末と違ってこの制限が消えます。
例:この券が欲しい人は、事務室へ来て下さい。
二、感情·感覚の対象の「が」
感情·感覚形容詞は、対象として「が」をとるという点でも、他の形容詞と大きく違います。この「が」は、今まで「ハとガ」の違いとして話題にとりあげてきた「が」とは少し違います。
例:私はふるさとが恋しいです。
私は彼の言葉がうれしかったです。
感情は部分がない 、感覚は対象の例が少ない
例:私は足が痛いです。
私は胸が苦しいです。
この「が」は大きく二種類に分けられます。
①感情·感覚の対象を示すもの。
ふるさとが恋しい その言葉がうれしい お金が欲しい
とげが痛い 太陽の光がまぶしい
②感覚を感じる体の部分
足が痛い 胸が苦しい 背中がかゆい 足元が寒い
ただし、この「が」が使われないこともよくあります。
例:私はとても眠い/楽しい です。
次の例では「が」があります。
例:卒業式の長いスピーチが眠くてたまりませんでした。
あの雰囲気がとても楽しかったです。
* 主体は、平叙文では話し手、疑問文では聞き手に決まっているので省略されることが多いです。
属性形容詞の例では、一つの文に「は」か「が」のどちらか一つしか現れなかったのですが、この場合は一つの文に両方あります。感情?感覚の持ち主、硬いことばで言えば、「主体」となる「は」があり、そして「が」はその感情の対象となるものか、あるいは感覚の部位を示しています。
属性形容詞としての用法
感情·感覚の対象が、一般的にその性質を持つものと見なされると、属性形容詞としての用法になります。
例:太陽はまぶしいです。
練習は苦しいですが、試合は楽しいです。
バラはとげが痛いです。(バラの性質)
(私は)ここに刺さっているとげが痛いです。(私の感覚)