次の文章を読んで、それぞれの問いに対する答えとして、最も適当なものを1.2.3.4から一つ選びなさい。
(兄は大地、弟は海也、美子は二人の友達、風見は大地と海也兄弟の姓である。)
「あ」と声がした。黙々と転石を割っていた海也が、こちらを見上げている。
「兄ちゃん、これ見て」
大地が腰をかがめると、海也の手元に黒光りするものがあった。「うわあ、きれい。これ化石でしょ」美子が大きな声をあげた。割れた面から浮き出した葉の輪郭に、白い指で触れる。
「一億年前の化石なんだ」と海也が言った。「へえ、そんなに長い間……。ずっと土の下に閉じこめられてて、なにか寂しげな感じね。すごいなあ。風見君は、化石採集が趣味なんだ。」
美子を無視し、大地は海也が他叩いた石に顔をよせた。①最初は見間違えかと思った。しかし、違う。本物だ。さっきのと同じ、イチョウモドキで、保存のよい葉が七つ。そして、それらの合間に、サクランボのような形のものが六つ枝についたままの状態で保存されていた。
「どうしたんだ」と海也が言った。「どうしたの、風見君」と美子。
「すごい保存状態だ。ほら果実まで残ってる。」
「それはすごいことなの」と美子。
「…ぼくが発見しんだろうか」海也は目を見開いた。
「ああ、海也の発見だ」
偶然の発見なのに、大地は嫉妬を覚える。②いつもこいつはそうだ。昆虫採集だって、ギターだって、兄が興味を持って始めたものに後からついてきて、すぐに兄を追い越した。
大地は、その標本を持参していた新聞紙で包み、デイパックの中に詰み込んだ。なんとなく③やるきが削がれてしまって、「帰るぞ」と海也に言った。
返事がない。海也は美子と一緒に断厳の下まで歩みより、何かを話し合っているのだ。海也の「ちがう」や「だろうか」が聞こえるくるだけで、内容は分からない。大地が歩み寄るとこっちを見た。
「兄ちゃん、今、話してたんだけど、④どうして兄ちゃんは下に転がった石ばかり叩いたの」
「その方が効率的だろ」大地は露頭の中程、身長の倍ほどの高さのところを指さした。
「あのあたりが植物」化石がたくさん出る層準だ。あそこまで登って、岩を切り出すのは大変な作業になるからな」
「あのあたりからしか出ないんだ...」
「化石というのは、いくつもの偶然が重なって( ⑤ )出来る。堆積環境が違えば出てくる化石の種類が違うし、目に見える化石がほとんど出てこない地層だってある。大きな化石が豊富な場所は限られてる」
「そうかあ、風見君よく知っているよね」涼やかな視線にどぎまぎして、大地はうつむいた。
「兄ちゃん、これは何だろうか」へその高さほどの地層を、海也はしゃがみ込んで見つめていた。
「ほら、これ」と指し示す指先には、周囲よりも黒っぽいものが露出していた。幅三センチ、長さ四〇センチ程度で、中央部は摩耗しているように見えた。「動物化石だ」と大地は言った。
注:デイパック:小型のリュックサック
問1 ①「最初は見間違えかと思った。」とあるが、どうしてそう思ったのか。
1 黒光がしている石だったから
2 1億年前の化石が見つかるとは思えないから
3 保存の状態がとてもよかったから
4 イチョウモドキは、なかなか発見されないから
問2 ②「いつもこいつはそうだ。」の「そうだ」とはどのようなことか。
1 大地より先に化石を発見する
2 いつも偶然に化石を発見する
3 いつも美子を感心させてしまう。
4 兄の後からついていって、すぐに兄を追い越す。
問3 ③「やるきが削がれてしまって」とあるが、どうしてやる気がそがれたのか。
1 いい化石が見つかったので、ほかの化石はほしくなくなったから
2 自分よりも先に、弟が化石を見つけたから
3 もう化石は見つからないだろうと思ったから
4 一ついい状態の化石を見つけて、目的が達成されたから
問4 ④「どうして兄ちゃんは下に転がった石ばかり叩いたの」とあるが、どうして大地は、下に転がった石ばかりたたいたのか。
1 身長の倍もあるところに登るのがいやだったから
2 身長の倍もあるところに登るのは危険だから
3 目に見える化石が出てこない層だから
4 転がっている石の中から化石を見つけるほうが簡単だから
問5 ( ⑤ )中に入る最も適当な言葉は何か。
1 その後 2 それから 3 はじめて 4 そこで
本期翻译答案与讲解:3 4 2 4 3