7.AがてらB
N/R-+がてら
① Aの機会を利用してBをする。Aが主目的であり、Bは副目的である。AとBの目的はそれぞれ具体的なここの目的である。
△ 父を駅まで迎えに行きがてら、ビデオを借りてきた。
△ 友達が近くに引っ越してきたというので、買い物がてら、一度訪ねてみた。
注意 Aは移動動詞、Bは動作動詞である。
対比 「AがてらB」は移動を伴う文に使われるが、「AついでにB」には、この制約がない。
○ 顔を洗うついでに、歯を磨いた。
× 顔を洗いがてら、歯を磨いた。
移動を伴う文でも「AがてらB」はAとBが同じ場所で達成されることではないが、「AついでにB」は同じ場所でもよい。
○ 手紙を出しに郵便局へ行ったついでに、年賀はがきを買ってきた。
× 手紙を出しに郵便局へ行きがてら、年賀はがきを買ってきた。(年賀はがきを郵便局以外の場所で買うのならいい)
② Aという目的でBをする。AはBの場所で達成される目的であり、BにはAの目的を達成するためにその場所へ向かうという意味が来るが、Aの達成だけでなくそれ以外の目的も含んだ表現である。
△ 孫の顔を見がてら、東京を訪れた。
△ 母の見舞いがてら、実家に帰った。
対比 「AをかねてB」ではAとBの主・副の関係が弱く、同じ程度の力を持つ目的である。
◆ 田中さんの見舞いがてら、山田さんの病室にも寄ってきた。
(田中さんの見舞いが第一の目的だが、山田さんの見舞いもした)
◆ 田中さんの見舞いをかねて、山田さんの病室にも寄ってきた。
(病院へは田中さんと山田さんの二人を見舞うために行った)
8.Aが早いかB
V-るが早いか
Aするのとほとんど同時にBする。すぐにBしたということが言いたい。
△ 席に着くが早いか、猛烈な勢いで食べ始めた。
△ 電車の扉が開くが早いか、乗客が我先に乗り込んできた。
注意 第三者の状態についてのみ使う表現である。Bに意向文・命令文はこない。
× わたしは家に帰るが早いか、テレビをつけよう。
Bに無意志表現は来ない。
× 彼は本を読み始めるが早いか、眠くなるそうだ。
対比 「Aや否やB」の後文が意志表現のものは、置き換えても文意は変わらないが、同時という感じが「Aが早いかB」のほうが強く、文のスピード感に差がある。また、実際にはAとBの間に時間の経過を伴う場合は、「Aが早いかB」は使わない。
× 彼女は新しい部署に配属されるが早いか、ベテラン並みの働きをした。
「Aや否やB」はBに無意志表現が来てもいいが、その場合「Aが早いかB」では置き換えられない。
対比 「AかAないかのうちにB」:AとBとの時間の関係が異なる。
◆ 部屋に入るが早いか、歌いだした。(入るとほぼ同時に歌い出す)
◆ 部屋に入るかは入らないかのうちに、歌い出した。(入る前に歌い始めている)
対比 「AたとたんにB」はBに何らかの(意外な)変化が来るが、「Aが早いかB」のBにはAからの自然な流れで起こることが来る。
○ 彼は薬を飲んだとたんに、苦しいといった。
× 彼は薬を飲むが早いか、苦しいといった。
9.~きらいがある
V-る/Nの+きらいがある
そういう傾向を持つ、そうなりやすい、という意味を表す。よくないことがらの場合に用いる。
△ うちの子は偏食のきらいがある。
△ 物価が上がると円も高くなるきらいがある。
10.Aずにはすまない
30.Aないではすまない
① 置かれている状況などを考えると、Aないという事態や言い訳は許されない。(Aないではすまない)
△ あれだけ人に迷惑をかけておいて、知らないではすまない。
△ 30才にもなって、人前に出ることには慣れていないではすまない。
② Aないままでは、気がおさまらない、満足できないという感情や性格を表す。
(Aないではすまない/Aずにはすまない)
△ いくら人に聞いても、自分の目で確かめないではすまない。
△ 父は何をやっても、最後までやり遂げないではすまない人だ。
対比 「Aないではすまない」は、その人の価値観から判断しても、Aないままでは気がおさまらないという状況であるが、「Aずにいられない」は体や感情が自然に反応してしまうときによく使う。
○ 毎晩酒を飲まずにはいられない。 × 毎晩酒を飲まないではすまない。
11.A(に・から・で・と・へ)すら
V-意向形+と+すら N+(助詞)+すら
Aを例としてあげ、そのAがBであるからA以外(Aと同種)のものもBだということを聞き手に推測させる表現。
△ これは小学生にすら分かる簡単な問題だ。
△ 父はどんなに体調の悪いときでも、病院へ行こうとすらしない。
△ この薬の扱いについては、専門家ですら意見が分かれるところだ。
注意 「すら」の前の助詞は、「すら」の後の動詞によって変わる。
対比 「AすらB」は「A(で・と・に)さえB」より古い表現。意味は同じだ。
◆ 事故後はショックのため、自分の名前さえ言えない状態だった。
◆ 事故後はショックのため、自分の名前すら言えない状態だった。