むかしむかし、あるところにツルとカメが住んでいました。 あるとき、カメが岩の上で日向ぼっこ(ひなたぼっこ)をしていると、そこへツルが舞い下りてきました。 カメがボソボソとした声で言いました。 「ツルさん。あんたはいいねえ。いつも空高く飛んでどこへでもいけるし…。おいらには羽(はね)がないもんなあ」。 すると、ツルが言いました。 「そうか。だったら、私の尾っぽ(おっぽ)を咥(くわ)えてておればいい。どんなことがあっても、決してものを言ってはダメだよ。しゃべると地面(じめん)に落ちてしまうからね」。 そこで、カメがツルの尾っぽを咥えると、ツルは空高くカメを連れて舞い上がりました。 「カメちゃん、おるかい」。 「うん」。 「カメちゃん、おるかい」。 「はあ」。 ずいぶん高い所へ上がると、カメはめずらしくて、キョロキョロ、下ばかり向いております。 ある村の上を飛んでいると、地上(ちじょう)では子供たちが、二匹を指さして、 「おーい、カメがツルにさらわれていくぞ」。 そのとき、カメは奮然(ふんぜん)として、 「何をいうか。おいらはさらわれていくのとちがうんだぞ」。 カメは地上へとまっ逆(さか)さまに落ちていきました。そのとき以来、カメの甲羅(こうら)には割れ目模様(もよう)ができたということです。
◆注解◆ 日向ぼっこ(ひなたぼっこ)―晒太阳。 ボソボソ―叽叽咕咕地说。小声地说。 尾っぽ(おっぽ)-尾巴。 咥(くわ)えて-叼住、衔住。 キョロキョロ―四下张望、睁大眼睛寻找。 奮然(ふんぜん)―奋然从事。 甲羅(こうら)―甲壳。
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