が、その中でも殊に一つ目立つて凄じく見えるのは、まるで獣(けもの)の牙のやうな刀樹の頂きを半ばかすめて(その刀樹の梢にも、多くの亡者が々(るゐ/\)と、五体を貫かれて居りましたが)中空(なかぞら)から落ちて来る一輛の牛車でございませう。地獄の風に吹き上げられた、その車の簾(すだれ)の中には、女御(にょうご)、更衣(こうい)にもまがふばかり、綺羅(きら)びやかに装つた女房が、丈の黒髪を炎の中になびかせて、白い頸(うなじ)を反(そ)らせながら、悶え苦しんで居りますが、その女房の姿と申し、又燃えしきつてゐる牛車と申し、何一つとして炎熱地獄の責苦(せめく)を偲ばせないものはございません。云はゞ広い画面の恐ろしさが、この一人の人物に輳(あつま)つてゐるとでも申しませうか。これを見るものゝ耳の底には、自然と物凄い叫喚の声が伝はつて来るかと疑ふ程、入神の出来映えでございました。
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地狱变相图
一说起地狱变相图,我就觉得那令人毛骨悚然的画面似乎就会立刻浮现在眼前。
虽说同是地狱变相图,但是拿良秀所画的与别的画师所画的一比,就会发现首先构图就不一样。他画的地狱变相图,只在屏风的一角上,小小地,画出了十殿阎王和小鬼们的模样。其余,便是一片涡卷翻腾的熊熊烈火,铺天盖地,火势之猛似可销毁刀山剑树。除了唐土式样的判官的衣裳上,斑斑点点地抹了些黄色和兰色以外,全都是烈焰的之色,其中泼墨绘出的黑烟和用金粉撒出的火星,如卍字形一般,飞旋狂舞。
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