欲張な犬
(イソップ物語)
犬は、とてもお腹(なか) がすいていました。
それで、さっきから肉屋(にくや) さんの前でじっと待っていたのです。
肉屋のご主人が、店の奥(おく) に入(はい) りました。
「今(いま) だ!」犬は、大きな肉(にく) を銜(くわ) えると、急(いそ) いで逃(に) げ出(だ) しました。
「こらーっまてーっ、泥棒(どろぼう) 犬め。」肉屋のご主人が、そう怒鳴(どな) りながら追(お) い掛(か) けてきました。でも、犬は、素早(すばや) く逃げて森の中に入りました。
「ここまでくれば安心(あんしん) だ。」犬は思いました。森の中には、小川(おがわ) が流(なが) れていて、小さな橋(はし) がかかっています。
犬は橋を渡(わた) りながら、ふと川(かわ) を見ました。
「おや、おいしそうな肉をくわえた犬がいるぞ。」
欲張りな犬は、その肉もほしくなったのです。
「弱そうなやつだ。俺(おれ) が吠(ほ) えたら、肉を置いて、逃げ出すだろう。」犬は、そう思いました。
犬は思(おも) い切(き) り怖(こわ) い顔をして、「うーっ」と唸(うな) りました。
それから、大きな声で、「わん!」と吠えたのです。
もちろん、口に銜えていた肉は、川に落ちて、流れていってしまいました。
「しまった。川の中の犬は、水に映(うつ) った俺の影(かげ) だったんだ。」
そう気がついた時は、もう遅(おそ) かったのです。
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