むかしむかし、丹波(たんば→京都府)の山奥に、一人の長者がいました。
很久很久以前,在丹波(京都府)深山里,有一个富翁。
ある日の事、長者の家で働く、初吉、忠助、末蔵という三人の下男が、田のあぜに腰をおろしてこんな話をしました。
有一天,在富翁家工作的初吉,忠助,末藏三个佣人坐在田埂边进行了以下交谈。
「どうだね、ひとつ自分たちが世の中で一番欲しいと思う物を言いあってみようじゃないか」
“怎么样,说说自己在这件世界上最想要的一样东西吧。”
それはおもしろいと、一番年上の初吉から言いました。「わしはな、家の旦那の様な暮しを、三日でもいいからしてみたいわい」
年纪最大的初吉觉得这个话题很有趣,于是就从他说起:“我啊,我想过我们家老爷那样的日子,就算只有三天也好。”
次の忠助は、「わしは、白銀をかごに三杯持ってれば、他に望みはないよ」と、言いました。
接下来忠助说道“我啊,我要是有三筐白银,就别无所求了。”
最後に末蔵は、「わしは、旦那の娘の桜花さんと結婚できたら、他に望みはないよ」と、いいます。
最后末藏说道:“我要是能和老爷的女儿樱花结婚的话,就别无所求了。”
さて、この話をちょうど散歩にやって来た長者が、こっそりと聞いていました。
而他们的谈话正好被来散步的富翁偷偷地听到了。
長者は家に帰って夕食の後、にこにこしながら、初吉を呼びました。「初吉や。お前たちが今日の昼、田のあぜで何を話していたか、わしに聞かせてくれないか」
富翁回家吃完晚饭后,笑着把初吉喊了过来:“初吉呀,你们今天白天在田埂说了些什么呀?说给我听听吧?”
すると初吉は、びっくりして、「旦那さま、あれは、じょ、冗談です」と、言いました。
初吉大吃一惊,说道:“老爷,那,那只是玩笑话啊。”
すると長者は、「冗談でもいい。言ってみなさい」と、言うので、初吉は正直に答えました。「へい。わしは三日でいいから、旦那さまの様な暮しがしてみたいと言ったんで」
可是富翁却说道:“玩笑也没关系,说说看。”,所以初吉就老实地回答道:“恩,我是想过老爷那样的日子,就算三天也好。”
すると長者は、初吉の願いを叶えてやることにしました。
于是,富翁就实现了初吉的愿望。
次に忠助を呼ぶと同じ事を聞き、忠助の願いである、かご三杯ほどの白銀を与えてやることにしました。
接下去又喊了忠助问了一样的问题,然后又实现了忠助的愿望,给了他三筐白银。
さて、最後に末蔵の番になりました。末蔵は顔をまっ赤にして、長者の前でうつむいていました。
最后,轮到末藏了。末藏红着脸,在富翁面前低着头。
「末蔵、そうビクビクせず、言っていたことを話すがええ」そこで末蔵は、思い切って、「はい、旦那さま。どうか、ごかんべんを。わしは、お嬢さまの桜花さまの婿になれたら、他に望みはないと申したんで」と、言いました。
“末藏,不用害怕,把说过的话说出来好了。”于是末藏就鼓起勇气说道“是。老爷。请老爷原谅。我说的是我如果能娶您的女儿樱花为妻的话,就别无所求了。”
すると長者は、しばらく考えていましたが、「うむ。これは、むずかしいな。娘の気持ちもあるので、わしには決められん」
富翁听了后,考虑了一会后说道:“恩。这就难办了。因为也要考虑女儿的心情,这不是我能决定的。”
「へえ、そりゃ、もう、ごもっともで」少しは期待していた末蔵は、がっかりしながら引き下がりました。
“唉,这是肯定的啦。”之前还有所期待的末藏,失望地退下了。
さて、長者はすぐに娘の桜花を呼び出して、末蔵の望みの事を話しました。
话说,之后富翁马上喊来了女儿樱花,把末藏的愿望告诉了她。
すると桜花は、顔をまっ赤にしながら、 天より高い、桜の花を 心かけなよ、こら末蔵と、歌いました。
樱花听了之后,脸变得通红,然后唱道 比天还高,樱之花 不要记在心里啊,末藏。
長者はそれを聞くと、また末蔵を呼んで、その歌を聞かせて、「末蔵や。もしお前がこれより立派な歌をよんだら、娘に話してお前の嫁にやってもええぞ」
富翁听了之后,就又把末藏喊来,把歌给他听了之后,说道:“末藏呀,如果你能唱出比这更好的歌的话,我就和女儿说,把她嫁给你。”
「ほっ、本当ですか!」末蔵はこれを聞いて、天にも昇る気持ちです。「ああ、いい歌さえ出来たら、おれは日本一の幸福者になれるんや」
“真,真的吗!”末藏听了后,高兴得都要飘起来了。“啊,如果能想出好的歌来,我就是全日本最幸福的人了。”
末蔵は一生懸命に考えて、こんな歌を紙に書いて長者のところに持って行きました。
末藏绞尽脑汁地想了之后,在纸上写了下面这样一首歌后拿去给富翁。
天より高い、桜の花も 散れば末蔵の、手におちる
比天还高,樱之花 如果散落,落入末藏之手
「なるほど。これは見事だ」長者はとても感心して、約束通り末蔵を桜花の婿にしてやったのです。
“原来如此啊。这可真棒。”富翁很是感动,就按照约定把樱花许配给了末藏。