本文:
(玄関で)
李 :(チャイムを鳴らす)
松本:はい、どちらさまですか。
李 :李と申します。
松本:あ、李さん、今、ドアを開けますから、ちょっとお待ちください。
松本:やあ、よくいらっしゃいました。どうぞお上がりください。
李 :お邪魔します。
(部屋で)
松本:どうぞこちらへ。
李 :失礼します。
松本:今、お茶を入れますから。
李 :どうぞおかまいなく。あのう、これ、中国のお菓子です。お口に合わないかもしれませんが、どうぞ、召し上がってください。
松本:どうもありがとうございます。
李 :今日はご家庭のことについていろいろお訪ねしたいんですが、よろしいでしょうか。
松本:どうぞ、何でも聞いてください。
李 :失礼ですが、松本さんは今年おいくつですか。
松本:今年四十八歳です。
李 :どこに勤めていらっしゃいますか。
松本:電機会社に勤めています。
李 :お子さんは何人ですか。
松本:子供は二人います。
李 :お給料はいくらぐらいですか。
松本:残業手当も含め、月三十五万円ぐらいです。税金や社会保険料などが天引きされて、手取りは二十八万円ぐらいです。
李 :奥さんは働いていらっしゃいますか。
松本:家内はスーパーでパートをしていて、一か月に六万円の収入があります。一家の収入は全部で三十四万円ぐらいです。
李 :日本の方は貯金に大変熱心だと聞いていますが。
松本:ええ、それは家を買うため、子供の教育のため、老後のために普段から準備しておく必要があるのです。
李 :話によると、カラーテレビ、洗濯機、冷蔵庫の三つは日本の九十九パーセントの家庭にあるそうですね。
松本:ええ、車のある家庭も七十パーセントを超えています。
李 :みんな、豊かな家庭ですね。
松本:確かに調査によると、年収が百万円以下の家庭はほとんどないようですが、しかし、金持ちと言ってよいかどうか、むしろ、生活は苦しいと思っている人もかなりいるのではないでしょうか。
李 :国全体として、物は豊かになったでしょう。
松本:ええ、僕の子供のころと比べて、本当に物は豊かになりました。
李 :しかし、食べる物が高すぎると思いませんか。一回の食事代が千円、コーヒー一杯四百円、小遣いがすぐなくなってしまうでしょう。
松本:ええ、そうです。僕は給料を全部家内に渡し、その中から六万円小遣いとしてもらいます。床屋代が三千円、あと、昼食を食べたり、たばこと新聞を買ったり…。たまに、友達とお酒を飲むと、一万円ぐらいすぐなくなります。
李 :松本さんは奥さんに家計を全部任せているんですね。
松本:ええ、結婚して以来ずっと…。物価は年年上がるばかりで、収入はそれほど多くなりません。だから、家内は家庭のためにいろいろと工夫しています。
李 :住宅のことについて少し伺いたいんですが、よろしいですか。
松本:ええ、どうぞ…。どんなことを聞いてもかまいませんよ。
李 :そのアパートに住んで、もう何年になりましたか。
松本:もう十五年になりました。子供たちも大きくなって、家の中が狭くなってきているから、来年こそは住まいを買おうと決心しましたが…。
李 :松本さんは家を建てたくありませんか。
松本:いいえ、マイホームを持ちたいとは思いますが、とてもそんな大金がないから、分譲住宅を買うことにしました。
李 :じゃ、庭付きの家を買うつもりですか。
松本:いいえ、そんなつもりはありません。庭付きの家を買うのはちょっと無理ですよ。最近は四千万円以上もするそうです。マンションなら何と買えそうですが。ほら、この広告を見てください。駅の近くに分譲マンションがあるんだって。
李 :分譲マンションって何ですか。
松本:マンションの一部屋を買ってしまうんですよ。
李 :それは高くないんですか。
松本:いやいや、そんなことはありません。サラリーマンの僕にとってはやはり高いんですよ。
李 :どのぐらいするんですか。
松本:東京では、ちょっとしたマンションが三千万円もしますよ。安月給のサラリーマンは二十年から三十年先まで月月ローンを支払うことになりますよ。
李 :三十年先だったら定年になるまでずっとローンを支払っていかなければならないんですか。
松本:そうです。だからローン地獄という言葉があるぐらいです。
李 :東京では、家を建てることは難しいですか。
松本:はい。最近は土地の値段が暴騰したので、家はもちろん、マンションやアパートの家賃もとても高くなってきています。都心部の地価は一坪一億円もしますよ。
李 :それじゃ、世界で一番高いじゃありませんか。
松本:そのとおりです。
李 :日本では、持ち家の割合はどのぐらいですか。
松本:そうですね。自営業の世帯は八十パーセント以上が家を持っていますが、サラリーマンは半数以上が家を借りて住んでいます。
李 :サラリーマンが一軒の家を買うのに、年収の七倍ぐらいが必要ですね。
松本:ええ、そうです。ですから、若い時は借家に住んでいて、四十代になって、子供たちが大きくなると、家を買うサラリーマンが多いですね。
李 :すなわち、サラリーマンにとって、マイホームは「高嶺の花」ということですね。
松本:そのとおりです。「衣」「食」に比べて、「住」の面で、日本はまだまだ改善の必要があると思います。
李 :今日はいろいろうかがって本当にいい勉強になりました。
松本:また、いらっしゃってください。
李 :どうも、ありがとうございます。じゃ、今日はこれで失礼します。
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