上手か下手かは、そのことに関する技術能力が高いか低いかということを表わします。
従って、私は料理が上手ですと言ったら、料理の技術能力が高いですという意味になりますから、
普通の大人は、こういう言い方はしません。せいぜい、料理が得意なほうですなどと言う程度です。
ここで言う得意とは、まず料理が好きであって、また自分で自分のレベルに満足しているという程度の意味を表わしています。ところが、上手と言ったら、技術能力が高いという意味なので、たとえ自分ではそう思っていても、その場にいる人の中に、もしもプロの調理師さんがいたりして、へえ、そうですか。では、今度、家で作ってくださいと言われ、いいですよなんてやす請け合いして、後でとんだ恥をかくこともあります。
よく知っている友達の間では、僕のほうが巧(うま)いよいや、俺のほうが上手だよとよく言ったりしますが、ですますを使って話すような、まだあまりよく知らない人の前で上手ですと言える大人は少ないと思います。
下手のほうは、技術能力が低いと言っているわけですから、こういう恥をかく危険はなく、自分のことにも使えます。苦手は、普通は嫌いであり、また経験も浅く、できればやりたくないことについて言います。
ゴルフが苦手だと言えば、あまり好きでもないし、経験も少なく、仕事でなければ、やりたいとも思わない。技術や能力が高いかどうかという水準ではなく、普通は技術も能力もお話にならない……無いに等しいような場合を言います。
またピーマンが苦手だと言えば、嫌いで、食べたくないし、無理に食べたら体の調子が悪くなるような場合について言います。