15.~たところで
① V-たところで…ない
動詞のタ形に続いて、そのような行為をしても期待する結果が得られないことを表す。結果の部分は述語のナイ形や「無駄だ/無意味だ」というような否定的な判断や評価を表す表現が用いられる。また、「…しても大丈夫/問題はない」という肯定的な評価を表す用法もある。これは前の事態が成立しても後の事態には影響が及ばないという関係である。「たとえ」「どんなに」「いくら」のような副詞や「何+助数詞」を伴うこともある。
△ いくら頼んだところで、あの人は引き受けてはくれないだろう。
△ 今ごろになって急いだところで、無駄だ。
△ 到着が少しぐらい遅れたところで問題はない。
② 後ろに少ない程度を表す表現を伴い、「仮にそのようなことが起こった場合でも、その程度・量・数はたいしたものではない」といった意味を表す。
△ うちの夫は出世したところで課長どまりだろう。
△ 泥棒に入られたところで、価値のあるものは本ぐらいしかない。
16.Aっぱなし
R-っぱなし
① Aという行為が行われた後、しなければならない処置や始末をしないで、そのままの状態にしてある。
Aをしたまま放置してある状態でB。
△ 荷物を置きっぱなしにして、席を離れないでください。
△ 食べっぱなしで出掛けないで、きちんと片付けなさい。
対比 「AままB」は「Aの状態でBをするのは好ましくない」という意味で、Aの状態に視点があるが、「Aっぱなし」は「Aの行為に対して処置・始末をしないこと」に視点があるため、時に話し手の<不満・飽きれ>などを表すこともある。
○ 彼は電気をつけっぱなしで、出掛けていった。(消さないで)
○ 彼は電気をつけたままで、出掛けていった。(つけた状態で)
したがって、<処置・始末が不要な場面>では、同じ動詞を使っていても、意味2となり、「Aっぱなし」には換えられない。
○ ジムさんは靴をはいたままで、部屋に入ってきた。
× ジムさんは靴をはきっぱなしで、部屋に入ってきた。
○ 掃除しっぱなしで、掃除機も片付けない。(意味1)
○ 朝から掃除しっぱなしで疲れた。(意味2)
対比 「AきりBない」は「Aという行為が行われ、その後に当然起こり得るBにならない」という意味である。「AっぱなしでB」は「Aという行為が行われた後、何の手当てや処理もされないでB」という意味である。
○ 立ちっぱなしで話をした。
× 立ったきりで話をした。
② Aという行為がずっと続いていたり、頻繁にAが起こってほかの事が行われないことを示す。
△ このままあの人に馬鹿にされっぱなしでは、我慢できない。
△ 彼はよくミスをするので、部長に叱られっぱなしだ。
17.XはAであれBであれY
Nであれ
たとえとしてAやBをあげ、AやBで代表されるどんなもの・場面・状態でもとにかくYである。
△ 会議中であれ、昼食中であれ、必ず知らせてください。(どんなときでも)
△ 陸路であれ、空路であれ、この天候では行くのは無理だ。(どんな行き方でも)
注意 「AであってもBであっても」を短くした形である。
「どんな~であれ」「なんであれ」という形で表れることもある。
対比 「AであれBであれ」は、AやBに名詞が付く。動詞が入る場合は「AにしてもBにしても」の形になる。
○ 一緒に旅行するにしても、酒を飲むにしても、気の置けない友達が一番だ。
× 一緒に旅行するのであれ、酒を飲むのであれ、気の置けない友達が一番だ。
ニュアンスとしては、「AであれBであれ」があらゆる条件にかなうことに使う場合が多いが「AにしてもBにしても」は択一的なところがあるためAの場合もBの場合もというように、話し手の視点がA・Bに置かれる。
◆ 株にしても、債券にしても、必ず危険性を伴うものだ。(株も危険だし、債券も危険だ)
◆ 株であれ、債券であれ、必ず危険性を伴うものだ。(株や債券で代表される有価証券は危険だ)
したがって、疑問詞に「であれ」「にしても」が付くときは、「どんな~であれ」「どちらにしても/いずれにしても」という組み合わせになることが多い。
◆ 外車もいいし、国産車もいいけど、どんな車であれ、燃費のいいものにしよう。
◆ 外車もいいし、国産車もいいけど、どちらにしても、燃費のいいものにしよう。