よるとされると、インフルエンザの話題である。周囲にそれほど患者(かんじゃ)が多い。町でも職場(しょくば)でも、マスク姿を見る。高熱(こうねつ)で寝込んだという人があちこちにいる。残念なことに、亡くなる人も増えてきた。
インフルエンザウィルスは温度20度前後、湿度(しつど)20%程度の環境を好むと言う。冬の室内などは、彼らにとってまことに都合(つごう)がいい。閉めきった部屋で患者がせきやくしゃみをすれば、ウィルスが撒き散らされ、付近を長時間漂(ただよ)う。これが気道の粘膜(ねんまく)に取り付くと、20分ほどで細胞(さいぼう)の中に取り込まれてしまう。用心していても、うつりやすい。
「人類最後の疫病(えきびょう)」という形容もある。ペストやコレラなど人間を恐怖(きょうふ)に陥れた疫病は、ほとんど克服(こくふく)された。しかしインフルエンザだけは、相変らず世界的な流行を繰り返しているからだ。遠くギリシャ時代にも流行ったと言われる。日本では南北朝時代の歴史物語【増鏡(ますかがみ)】に、せきの病が蔓延(まんえん)してたくさんの人が亡くなった、との記述があるそうだ。
江戸時代、【お駒風】、【谷風】、【お七風】などと名付けられたインフルエンザが猛威(もうい)をふるった。まず長崎で発生、中国地方から関東に達し、さらに東北へ進むのがお決まりだったと言う。外国からやってきて、開港地の長崎に上陸(じょうりく)、導火線(どうかせん)がじりじり燃えるように伝染(でんせん)していく様子がわかる。
中世のイタリアでは、流行は星や寒さの影響と考えられていた。影響を意味する「インフルエンツァ」が、インフルエンザの語源(ごげん)らしい。交通の発達や都市の密集(みっしゅう)で、感染速度は速くなった。有名な「スペインかぜ」は1918年から翌年にかけ地球を一周したが、40年後の「アジアかぜ」は所要(しょよう)10ヶ月だった。
それにしても近ごろ、ハンカチや手で覆いもせず、横も向かずせきをする人が、なぜこうも多いのだろうか。はた迷惑(めいわく)な罰(ばち)当たりメ。
=【朝日新聞】の「天声人語」より=
【注解】
よるとされると─人们到了一起就...
インフルエンザ─流行性感冒(influenza)。
マスク─口罩
ウィルス─病毒。病菌。
せき─咳嗽。
くしゃみ─喷嚏。
取り込まれる─侵吞。拿进来。
疫病(えきびょう)─传染病。
ペスト─鼠疫。
コレラ─霍乱。
相变らず─依然如此。仍旧如此。
【増镜(ますかがみ)】─【增镜】,日本南北时代的历史故事。
【お驹风(こまかぜ)】─日本江户时代对流行感冒的称呼。
【谷风(たにかぜ)】─日本江户时代对流行感冒的称呼。
【お七风(しちかぜ)】─日本江户时代对流行感冒的称呼。
中国地方―指日本的广岛县、冈山县等地。
じりじり─逐渐地,渐渐地。
ハンカチ─手帕。
はた迷惑(めいわく)─榜人受妨害。
【译文】
流行性感冒
人们到了一起就谈论流行性感冒的话题。我们身边有许多人患流行性感冒,无论在街上还是在工作单位都有人带着口罩,有许多人因高烧导致卧床不起。令人遗憾的是死亡的人数也在增加。
据说,流感病毒最适合在温度为20度左右、湿度为20%左右的环境中繁殖。冬季的室内对流感病毒来说是最合适的地方。患者在门窗紧闭的房间里打一个喷嚏或者咳嗽一下的话,病毒就会向四周扩散,并且长时间地飘荡在周围。病毒一旦附在人的呼吸道粘膜上,20分钟后就会侵入细胞内。即使注意也很容易被传染。
有人形容这种病毒是“人类最后一种疫病”。因为曾经使人类陷入恐慌的鼠疫和霍乱等疫病几乎都被攻克了,而只有流行性感冒仍然在世界上频频流行。据说早在希腊时代就有流感流行。日本南北朝时代的历史故事《增镜》一书中就有因一种咳嗽病的蔓延导致许多人死亡的记载。
在江户时代,被称为『驹风』、『谷凤』、『七风』的流感来势凶猛。这种流感最初是发生在长崎,后来从中国地方蔓延到关东,最后向东北地区蔓延。由此得知这种病毒由外国传来,在开放港口长崎进入日本,就像逐渐燃烧的导火索一样传播着。
在中世纪的意大利,人们认为流感的流行是受到星辰和寒冷的影响所致。意思为『影响』的『Influence』似乎就是『Influenza』的语源。由于交通的发达和城市的密集,传染的速度加快了。闻明于世的『西班牙流感』自1918年开始流行,到第二年才环绕地球一周,而40年后的「亚洲流感」所用的时间是10个月。
尽管如此,近来为什么有这么多人咳嗽时既不用手帕或手捂住嘴,也不把头扭向一边呢。这种损人的行为会遭报应的。