むかしむかし丹後(たんご)の国に、お爺さんとお婆さんが住んでおりました。お爺さんは飛べなくなった雀(すずめ)を介抱(かいほう)し、大事(だいじ)に育てておりました。
ある日、お爺さんは山に柴刈(しばか)りに、お婆さんは川に洗濯(せんたく)に行きました。
お婆さんが家に戻ってみると、朝作っておいた糊(のり)が、すっかりありませんでした。
おばあさんは「だれが私の大切(たいせつ)なものを食べた。」と言って、雀の口を見ると糊がいっぱいついていました。
お婆さんはカンカンに怒って、「このわるいすずめ!」とさけび、雀の舌(した)をハサミでちょん切ってしまいました。
雀は泣く泣くやぶへ逃げて行きました。
しばらくしておじいさんは山から帰ってきて、大すきなすずめの姿(すがた)が見えません。
「おばあさん、雀はどこにいる。」とききましたが、
おばあさんは「あのわるい雀が私の大切な糊を食べたから舌をちょん切って追い出してやった。」と答えました。
おじいさんは「何ということだ。それはばあさんがわるいぞ。」と言って、
「舌切り雀、お宿(やど)はどこだ。」と歌いながら、雀を捜(さが)しに出掛(でか)けました。
ある竹薮(たけやぶ)まで来ると、舌を切られた雀が姿を現し、喜んでお爺さんを迎えました。
そして、ごちそうを出し、珍しい踊りを見せ、もてなしたのです。
お爺さんが帰るときになって、雀は大きい箱(はこ)と小さい箱を出していいました。
「どちらでも、お好きな方をどうぞおみやげに……」
「わしは老齢(ろうれい)だから、軽い小さな箱にしておくれ。」
家に帰って、お爺さんがその箱を開けて見ると、金ピカの小判(こばん)が出てきました。
それを見たお婆さんは、「舌きり雀、お宿はどこだ。」と歌いながら竹薮竹へと出掛けました。
お婆さんもまた歓迎(かんげい)を受けましたが、帰るときに、お土産(みやげ)に大きな箱の方を選びました。あまりに重いので、家に帰る途中で、その箱の中を開けてみると、中からヘビやムカデがはい出だしてきてさんざんお婆さんを懲(こ)らしめたということです。
▲注解▲
丹後(たんご)―旧国名。现日本京都府的北部。
介抱(かいほう)―照顾、护理、服侍。
ちょん―轻而易举的完成、结束。
もてなし―对待、款待、招待。
小判(こばん)―一两金币。日本古代椭圆形金币。
お土産(みやげ)―礼物、礼品、纪念品。
ムカデ―蜈蚣。