A:ガイドの李さん
B:添乗員の小林さん
C:日本人観光客
B:李さん,杭州へは汽車で行くのですか,それともバスですか。
A:汽車です。上海を発つのは七時四十五分ですが,皆さんのご用意はいかがですか。
B:ええと,大体できていると思います。皆さん,ロビーの方で待っておられます。
A:それなら,早速ですが,参りましょうか。
(汽車に乗り込んで)
C:ほう,広いですな。(坐ってから)うん,ゆったりしていいな。
A:えっ,日本の汽車は違うんですか。
C:ええ,違いますよ。日本のはわりに小さくて,座席も狭いですね。えっ,これは回転椅子ですか。
A:そうです。自由に向きを換えることができます。これは一等車ですからね。
C:そうですか。(顔を外に向けて)……。なつかしい風景です。日本の農村とそっくりですね。
A:そうでしょう。こちらもほとんど稲作ですから,農村へ行ったら,どこも水田ばかりで……。
C:私はどっちかというと,農村の方が好きですね。広々として,気持ちもせいせいしますし……。
A:ところで,川辺さん,杭州は今度が初めてですか。
C:ええ,そうです。中国も今度が初めてですから,杭州へはもちろん一度も行ったことがありません。
A:そうですか。それならまずご案内のしがいがありますね。中国には「天上には天国,地上には蘇州、杭州」という諺がありますが,御存じですか。
C:それは本では読んだことがありますけど,やはりこの目で見ないと分かりませんからね。楽しみにしていますよ。
A:そうですね。杭州は風光明媚(ふうこうめいび)なところで,名所、旧跡はずいぶん多いんですよ。
C:それは結構ですね。昨日は中国一の大都会を見て,今日はまた,地上一の杭州を見る。もう言うことはありませんよ。ところで,杭州の見所と言えば,どんなところがあるのですか。
A:それはいろいろありますが,まず西湖ですね。
C:西湖を遊覧するのはただ船に乗って湖をまわるだけなのですか。ほかに何か見られますか。
A:見られますよ。船からは景色のすばらしい三潭印月が見られます。それは湖の中にある島で,その島の中にはまた湖があります。ほんとうに言葉に絶する美しいところなんです。
C:ほう,それはおもしろそうでね。ほかにどんな名所、旧跡が見られますか。
A:最も有名なのは飛来峰という石窟(せっくつ)ですね。そこには石刻の仏像が二百八十体もあり,六和塔や,霊隠寺などと並んで,重要な仏教の遺跡になっています。
C:そうですか。それなら,李さん,杭州に着いたら,現地でもまた詳しく紹介してくださいよ。私は杭州のようなところに一番興味を持っていますから。
A:はい,時間の許すかぎりできるだけたくさんのところへご案内いたしましょう。