大学のキャンバスでこんな会話がよく聞きます。
A:まだそこでジベタリアンやってるの。どこかへ行こうよ。
B:そうね。何か食べに行こう。イタメシ屋なんかどう。
A:そのへんでマクるつもりだったけど
B:うーん、ほかに選択肢ある?
A:うん、日本ソバでもいいけど。
* ジベタリアン:地べた(地面)に座り込む人。
* イタメシ屋:イタリア料理の店。
* マクる:マクドナルドで食事する。
* 日本ソバ:普通のそば。
ごく普通の会話ですが、年配の人はこんな会話をしませんし、また、こんな会話を聞いても全部わかるとは言えません(若者ことばの意味は簡単に説明しましたが、次号で詳しく説明します)。中年のいわゆる「おとな」にとって、こうした若者の会話は日本語でないような感じがするかもしれません。でも、こうした若者ことばは、よく分析してみると、日本語の性格が反映していておもしろいものです。このコーナーでは、この数年間に広まった流行語と若者ことばについてお話しようと思います。
流行語を作るのは社会的な事件であったり、マスコミであったり、タレントであったりしますが、やはり若い人の生活や感性が影響します。流行語と若者ことばは深い関係がありますが、もし区別するとしたら、流行語は一時的なもので、若者ことばは若者の話し方一般にも関係するものとして、それぞれの特徴を説明したいと思います。
このコーナーでは、「流行語」と「若者ことば」の二つに分け。いずれもそれぞれ一つの中心的なテーマでまとめてみようと思います。第1回は「流行語」で<環境と省エネ>を取り上げ、次回は「若者ことば」で<電話とメール>を扱います。
「環境と省エネ」の流行語
2005年の春と夏にはこのテーマについて二つの代表的な流行語が生まれました。「もったいない」と「クールビズ」です。
ⅰ「もったいない」
一つは日本の新聞やテレビでも紹介されたアフリカのノーベル賞受賞者、ワンガリ??マータイ(Wangari Maathai)さんが、日本語の「もったいな」という表現が気に入って、あちこちで使ったという話題がおおきく取り上げられました。
「もったいない」という語は新語ではなく、伝統的な表現で、今の中年以上の人が子供のころ、よく大人から聞かされたものです。「お百姓さんが苦労して作った食べ物を粗末にしてはいけない、もったいないとよく言われました。それが経済成長とい豊かな物質文明に埋もれた現代の社会ではあまり聞かれなくなったのを、この外国の緑化邉婴瓮七M家から、「日本にはこんないい表現があるのだ」と取り上げてもらって、これが脚光を浴びた、つまり新しい光を与えられたということです。
ⅱ「クールビズ」
冷房を弱くして省エネ、つまりエネルギーの節約をはかるため、政界の指導的な人物が中心になって、背広やネクタイを着用しない簡略な服装を広めようとしました。これをクールビズと言っています。Coolも英語、ビズはbusinessの略ですが、これは日本で使い出した英語的な表現です。あるアメリカ人の翻訳家に聞いてみましたら、cool businesswearと言えばわかるけれども、Coolという語は「かっこいい」と言う語感が強いので、ちょっとわかりにくいと言うことでした。10年ほど前には同じような服装を「省エネルック」と呼んだことがありますが、いずれにしても、英語を利用した呼び方です。これから冬に向かっては暖房の温度を低く保つために厚着をすることを環境省が提案していて、それを「ウォームビズ」と言うことを考えているようです。
この二つの流行語に、環境とエネルギーの問題に悩む現代の姿が浮き彫りになっていると思います。
ⅲ その他
「もったいない」に似たものに「打ち水」があります。これはバケツなどの水を少しずつ庭や道路に撒くことで、昔はごく普通に行われていたのが、冷房設備などの普及でしばらく省みられなかったものです。電気を使わなくても温度が少し下がると言うことで、効果が見直され、環境省が8月10日を「全国一斉打ち水の日」と名づけて発表したりしています。