この「青柳の糸 よりかくる 春しもぞ 乱れて花の ほころびにける」という歌は天皇が歌を献上せよと仰せられたときに、紀貫之がよんで奉った歌。
はじめてみたとき、柳が若い芽を伸ばし、その細い糸で縫おうとしている春だから、花々は思い思いにつぼみをほころばせてきたのだな、という光景が目の前浮かべる。花の咲くのをほころびるというので、着物のほころびを連想して青柳が糸をよってかけるという春、つまり糸はいくらでもある春であるのになぜ花はみだれほころびるのかという連想をしている。「青柳」は枕詞で、「春しもぞ」 の「しもぞ」はそれぞれ強意を表わし、特に順接?逆接をあらわしているわけではない。花のつぼみがほころんで、それを糸で縫おうとする柳、というのでは平凡なので、順序を逆にして出したものであろう。そこに 「乱れて」 という言葉が生きてくる。
「乱れる」のは柳、という説もあるが、ここでは様々に開こうとしている花に、柳の葉が風で揺れている様子と見ておく。
ほころんでも縫ってくれる柳の糸がある春だからこそ、という感じがする。