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贯通会员翻译作品《羅生門》

作者:华南虎  来源:贯通论坛   更新:2005-9-21 15:44:00  点击:  切换到繁體中文

 

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 ある日の暮方の事である。一人の下人(げにん)が、羅生門(らしょうもん)の下で雨やみを待っていた。

黄昏时分,罗生门下,一个不知是谁家的下人在此躲雨。


 広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗(にぬり)の剥(は)げた、大きな円柱(まるはしら)に、蟋蟀(きりぎりす)が一匹とまっている。羅生門が、朱雀大路(すざくおおじ)にある以上は、この男のほかにも、雨やみをする市女笠(いちめがさ)揉烏帽子(もみえぼし)が、もう二三人はありそうなものである。それが、この男のほかには誰もいない。

 空荡荡的门洞里,就此一人。除此之外,便只有一匹蟋蟀,蹲伏在朱漆斑剥陆离的粗大的柱子上了。罗生门正当朱雀大道上,按理,该有几个戴斗笠或软帽的行人来此避雨。然而,现在却只他一个,再无旁人了。

 何故かと云うと、この二三年、京都には、地震とか辻風(つじかぜ)とか火事とか饑饉とか云う災がつづいて起った。そこで洛中のさびれ方は一通りではない。旧記によると、仏像や仏具を打砕いて、その()がついたり、金銀の箔がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、(たきぎ)(しろ)に売っていたと云う事である。洛中がその始末であるから、羅生門の修理などは、元より誰てて顧る者がなかった。するとその荒れ果てたのをよい事にして、狐狸(こり)が棲む。盗人(ぬすびと)が棲む。とうとうしまいには、引取り手のない死人を、この門へ持って来て、棄てて行くと云う習慣さえ出来た。そこで、日の目が見えなくなると、誰でも気味を悪るがって、この門の近所へは足ぶみをしない事になってしまったのである。

若问为甚,只因近二三年来,京都灾祸连连,地震、龙卷风、大火、饥懂等般,将此若大个京城闹得凋敝不堪。据旧时所记,当时竟有将佛像、佛事家什砸碎、将饰有朱漆以及金箔银箔的木头堆置路旁,当柴薪卖的事情。京里的境况既已如此,自无人顾及罗生门的修缮等事了。一任其废弃后,便有狐狸出没,盗贼蛰居。甚至日久成俗,只管将些无主的尸首拖了进来。故尔日交黄昏之际,便阴森可怖,再无人近前了。

 その代りまた鴉がどこからか、たくさん集って来た。昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾(しび)のまわりを啼きながら、飛びまわっている。ことに門の上の空が、夕焼けであかくなる時には、それが胡麻をまいたようにはっきり見えた。鴉は、勿論、門の上にある死人の肉を、(ついば)みに来るのである。――もっとも今日は、刻限が遅いせいか、一羽も見えない。ただ、所々、崩れかかった、そうしてその崩れ目に長い草のはえた石段の上に、鴉の糞が、点々と白くこびりついているのが見える。下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の(あお)の尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰(にきび)を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。

人虽不来,却有许多的乌鸦,也不知来自何处,成群地飞来,聚集于此。白天,无数的乌鸦绕着高高的飞檐,啼叫盘旋。特别是在门楼上方,每到夕阳似火时分,那些乌鸦便像是洒在天空的芝麻一样,清晰可见。自不待言,那乌鸦是为啄食死人的肉而来的。不过,今日或许时辰已晚,竟一只也看不到。然而,在那即将坍塌,裂缝处已长出青草的石级上,乌鸦那发白的粪便随处可见。那下人身穿一领洗得褪了色的青衣,在共有七级的石阶的最上面一级,一屁股坐了下来,呆呆地看着雨点落下来。右脸上长出的那颗大粉刺又不时地惹得他心烦意乱。

 作者はさっき、「下人が雨やみを待っていた」と書いた。しかし、下人は雨がやんでも、格別どうしようと云う当てはない。ふだんなら、勿論、主人の家へ帰る可きはずである。所がその主人からは、四五日前に暇を出された。前にも書いたように、当時京都の町は一通りならず衰微(すいび)していた。今この下人が、永年、使われていた主人から、暇を出されたのも、実はこの衰微の小さな余波にほかならない。だから「下人が雨やみを待っていた」と云うよりも「雨にふりこめられた下人が、行き所がなくて、途方にくれていた」と云う方が、適当である。その上、今日の空模様も少からず、この平安朝の下人の Sentimentalisme に影響した。(さる)(こく)(さが)りからふり出した雨は、いまだに上るけしきがない。そこで、下人は、何をおいても差当り明日の暮しをどうにかしようとして――云わばどうにもならない事を、どうにかしようとして、とりとめもない考えをたどりながら、さっきから朱雀大路にふる雨の音を、聞くともなく聞いていたのである。

笔者前面写到,“下人在此躲雨”。实在是雨止之后,他也没什么特别的差使可做。若在平时,他自然可以回到主人家里去。然而,四五日前他已被主人打发了出来。前面已经提到,当时的京都城已衰败不堪。眼下这个下人,被伺候了多年的主人打发出来,也只是此种衰败的些许余波而已。所以,与其说“下人在此躲雨”,还不如说是,“被雨所困的下人,正走投无路,困顿于此”更加妥当。而今天的天气,又极大地加深了那平安朝(注:平安朝,公元七九四年—一九二年。相当于中国的唐朝末年到南宋初年。)下人的感伤。雨,刚过申时便已下了起来,到目今时分也不见要停。因此,那下人只得一边漫无边际地思忖着明日那迫在眉睫毛的生计——即所谓明知无望,也止不住地非要去伤脑筋——,一边心不在焉地听着朱雀大路上那持续已久的雨点声。
  

 雨は、羅生門をつつんで、遠くから、ざあっと云う音をあつめて来る。夕闇は次第に空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜につき出した(いらか)の先に、重たくうす暗い雲を支えている。

雨,将罗生门团团裹住,哗哗的雨声从四面八方聚合而来。暮色已将天空压得低低的,抬头望去,门楼顶上斜飞而出的檐头瓦已抵住了沉甸甸的乌云。

 どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる(いとま)はない。選んでいれば、築土(ついじ)の下か、道ばたの土の上で、饑死(うえじに)をするばかりである。そうして、この門の上へ持って来て、犬のように棄てられてしまうばかりである。選ばないとすれば――下人の考えは、何度も同じ道を低徊した揚句に、やっとこの局所へ逢着(ほうちゃく)した。しかしこの「すれば」は、いつまでたっても、結局「すれば」であった。下人は、手段を選ばないという事を肯定しながらも、この「すれば」のかたをつけるために、当然、その後に来る可き「盗人になるよりほかに仕方がない」と云う事を、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいたのである。

既要在无望中找出活路来,便无遐顾及手段了。若要顾及手段,便只有饿死在土墙下、街道旁,然后再像死狗一样,被人拖到这门楼上扔掉。如若不择手段呢?——那下人在同一条脑筋上兜了几圈,最后终于撞到了这里。可是到了“如若”这里,便再也想不下去了。那下人虽己认可了不择手段,而要实现这样的“如若”,接踵而至的自然是“只有去做盗贼”了,而对此他尚缺乏主动认同的勇气。

 下人は、大きな(くさめ)をして、それから、大儀そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう火桶が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮なく、吹きぬける。丹塗(にぬり)の柱にとまっていた蟋蟀も、もうどこかへ行ってしまった。

那下人打了一个大喷嚏,吃力站起身来,夜凉己重的京城已冷得要烤火盆了。风随同暮色肆无忌惮地在门柱间穿行而去。那只蹲伏在朱漆圆柱上的蟋蟀早已不知了去向。

 下人は、(くび)をちぢめながら、山吹(やまぶき)汗袗(かざみ)に重ねた、紺の襖の肩を高くして門のまわりを見まわした。雨風の(うれえ)のない、人目にかかる(おそれ)のない、一晩楽にねられそうな所があれば、そこでともかくも、夜を明かそうと思ったからである。すると、幸い門の上の楼へ上る、幅の広い、これも丹を塗った梯子(はしご)が眼についた。上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。下人はそこで、腰にさげた聖柄(ひじづか)太刀(たち)鞘走(さやばし)らないように気をつけながら、藁草履をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた。

下人缩着脖子,耸起青衣内衬着黄色汉衫的肩头,打量着门楼四周。他寻思着,若有一既无风雨之患,又能避人耳目之地,就先对付一夜再说。说来也巧,这时一架通向门楼的、宽宽的、也漆着朱漆的楼梯映入了他的眼里。楼上要说有人,也只有死人罢了。于是,那下人一面留心不让腰里那把木柄长刀从鞘中脱落,一面抬起穿着草鞋的脚,踏向楼梯最下面的一级。

 それから、何分かの後である。羅生門の楼の上へ出る、幅の広い梯子の中段に、一人の男が、猫のように身をちぢめて、息を殺しながら、上の容子(ようし)を窺っていた。楼の上からさす火の光が、かすかに、その男の右の頬をぬらしている。短い鬚の中に、赤く膿を持った面皰のある頬である。下人は、始めから、この上にいる者は、死人ばかりだと高を括っていた。それが、梯子を二三段上って見ると、上では誰か火をとぼして、しかもその火をそこここと動かしているらしい。これは、その濁った、黄いろい光が、隅々に蜘蛛の巣をかけた天井裏に、揺れながら映ったので、すぐにそれと知れたのである。この雨の夜に、この羅生門の上で、火をともしているからは、どうせただの者ではない。

  片刻之后,在通向罗生门门楼的宽宽的楼梯中段,便出现一条汉子,将身子缩地猫儿似地,屏息窥视着上面的动静。而楼上射来的火光,淡淡地照到了这汉子的右颊。短胡子中是一颗红肿化脓的粉刺。起先,这个下人以为上面尽是死人,根本没放在心上。不料,上得几级楼梯一看,便发现还有人点着火,而且这火光还在这里那里地游动着。昏暗发黄火光,在挂满了蜘蛛网的阁楼上晃荡,所以一看便知。他心中暗忖,在这样一个风雨之夜,竟敢在这罗生门上亮着火,定非等闲之辈。

 下人は、守宮(やもり)のように足音をぬすんで、やっと急な梯子を、一番上の段まで這うようにして上りつめた。そうして体を出来るだけ、(たいら)にしながら、頸を出来るだけ、前へ出して、恐る恐る、楼の内を覗いて見た。

那下人壁虎似地蹑手蹑脚,好不容易爬到了这陡直的楼梯的最上一级。他尽量匍匐下来,伸长脖子,战战兢兢地向楼内打量。

 見ると、楼の内には、噂に聞いた通り、幾つかの死骸が、無造作に棄ててあるが、火の光の及ぶ範囲が、思ったより狭いので、数は幾つともわからない。ただ、おぼろげながら、知れるのは、その中に裸の死骸と、着物を着た死骸とがあるという事である。勿論、中には女も男もまじっているらしい。そうして、その死骸は皆、それが、かつて、生きていた人間だと云う事実さえ疑われるほど、土を捏ねて造った人形のように、口を()いたり手を延ばしたりして、ごろごろ床の上にころがっていた。しかも、肩とか胸とかの高くなっている部分に、ぼんやりした火の光をうけて、低くなっている部分の影を一層暗くしながら、永久に(おし)の如く黙っていた。

果然,正如传闻所言,楼里胡乱地扔着几具死尸,就火光照到的地方看,地方比想象中的要小,也看不出到底有多少具尸体。昏暗朦胧中,只觉得里面有光屁股的,也有穿着衣服的。自然,男女都有。而且,这些尸体叫人全然不信他们是曾经活过的人,倒像是泥捏的假人,张着嘴,摊着胳臂,横七竖八地躺在楼板上。肩膀以及胸脯这些突出的部位,浴在朦胧的火光里,使得凹陷部位愈加地阴沉黑暗,无不似哑巴一般永久地沉默着。

 下人は、それらの死骸の腐爛した臭気に思わず、鼻を(おお)った。しかし、その手は、次の瞬間には、もう鼻を掩う事を忘れていた。ある強い感情が、ほとんどことごとくこの男の嗅覚を奪ってしまったからだ。

  死尸腐烂的浓臭,使得那下人不由得赶紧捂住了鼻子。可是,接下来他的手竟忘了捂鼻子了。因为一个强烈的刺激,几乎完全使他丧失了嗅觉。

 下人の眼は、その時、はじめてその死骸の中に蹲っている人間を見た。檜皮色(ひわだいろ)の着物を着た、背の低い、痩(や)せた、白髪頭(しらがあたま)の、猿のような老婆である。その老婆は、右の手に火をともした松の木片(きぎれ)を持って、その死骸の一つの顔を覗きこむように眺めていた。髪の毛の長い所を見ると、多分女の死骸であろう。

那下人的眼睛这时才刚刚看到,尸首堆里竟还蹲着一个人。是一个身穿棕黑色衣服、又矮又瘦、满头白发、猴子似的老婆子。这老婆子右手里攥着一块点燃了的松木片,正在端详一具尸体的脸。从那长头发看来,当是一具女尸。

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