私は中国語の勉強を始めて10年になりますが、中国語で電話をする時には、とても緊張します。皆さんも日本語で電話をかける時は私と同じように緊張するのではないでしょうか。そこで、今回は日本語で電話をかける時、どのように話を始めればいいかについて考えてみましょう。
直接会って話をする場合と違い、電話は「かけた人」と「受けた人」に大きな違いがあります。電話をかけた人は「話の準備」を終えてから電話をかけますが、受けた人は電話を受けてから「聞く準備」をしなくてはなりません。だから、電話の会話では、かけた人が受けた人のことを考えて上手に「話の流れ」をつくらなくてはならないのです。つまり、電話をかけた人がどのように会話の「切り出し」をするか、ということがとても重要になります。
電話をかけたら、「かけた人」がまず自分の名前を言いましょう。
「もしもし。本田ですが……。こんにちは」
「杏林大学の本田です。ごぶさたしております」
「本田ですが……お元気ですか」
そのあと、「今、お話してもよろしいでしょうか」「今、お話しても大丈夫?」と尋ねましょう。そして、相手が「ええ、いいですよ」「大丈夫だよ」と言ったら、次に「実は(ちょっと)、~があって、電話したんです(けど/が)……」と、必ず電話をかけた目的を話しましょう。例えば次のような表現があります。
1.頼み事がある場合
「実はお願いしたいことがあって、お電話したんです……」
2.聞きたいこと、質問がある場合
「実は、ちょっとおうかがいしたいことがあって、お電話させていただいたんですが……」
「実は、本田さんにちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「実は、ちょっとわからないことがあるので、電話したんですが……」
3.誘う場合
「実は、来週の土曜日に花見に行こうという計画があるんだけど……」
「実は、今度、日本の映画が上演されるので、いっしょにどうかと思って電話したんですが……」
4.感謝する・あやまる場合
「実は、~のことで一度お礼を申し上げておきたいと思いまして……」
「実は、この間は申し訳ないことをしたと思って……」
時には目的がなく、ただ相手と話したいだけという場合もあります。そのような場合も、電話の始めに言う必要があります。このような「切り出し」のあらたまった表現として、次のようなものがあります。
「特に用件はありませんが、ごぶさたしているのでお電話を差し上げました」
しかし、ふつう「用事がないけど、声が聞きたい」という人は、親しい友人でしょうから、次のようなくだけた表現の「切り出し」が使われることが多いと思います。
「別に用事はないんだけど……」
「たまには声が聞きたくて……」
「元気かなって思って電話してみたんだけど……」
「ずいぶん会ってないなと思って……」
「その後どうしているのかなって……」
このように、電話を「かけた人」が電話をかけた目的を「切り出し」として上手に伝えて、話の流れをつくる、ということがとても重要です。これらの表現を覚えれば、皆さんもあまり緊張せずに日本語で電話がかけられるようになるでしょう。
本田弘之
杏林大学助教授