蕎麦屋で「私、たぬき」って、注文したことある?それじゃ質問、「私は虎だ」って叫んだら、何が出てくる?
“私、たぬき”,在日本荞麦面店,你这样点过餐吗?再来一个问题,如果在店里吼一声“私は虎だ”,你猜会出现什么?
一番最初の授業で、「私はヤンです」「私の専門は建築学です」などの練習をして、自己紹介がようよう言えるようになったばかりの留学生、すっかり日本語が話せる気になって、すぐにも町へ繰り出していきます。「ありがとう」も「すみません」も言えるようになったし、日本語OKネ!ノープロブレム!
“我是杨”、“我的专业是建筑学”,像这样,留学生们在第一节日语课上练习如何做自我介绍,好不容易学会了,就想赶紧实战一下,于是一伙人立马上街找机会去了。“谢谢”“不好意思”之类的也会说了,日语已是小菜一碟!闹普绕卜勒姆!
友達に連れられて大衆食堂に入った留学生が、他の客が「ぼくは、きつねだ」「わたしは、うなぎです」と、店員に言っているのを聞きました。
有留学生被日本朋友带去公共食堂吃饭,其间听见别的客人这样对店员说,“ぼくは、きつねだ(我要油炸豆腐面)”、“わたしは、うなぎです(我要鳗鱼饭)”。
日本語が少しだけ聞き取れて、「自己紹介しているのかな」と思ってとまどっている留学生に、少し英語ができる日本人の友だちが「ぼくはきつねだ。I am a fox. わたしはうなぎです。I am an eel.」と、翻訳して聞かせました。
能听懂一点日语的这位留学生十分疑惑,这些人得是在做自我介绍呢。此时,略懂英语的日本友人这样翻译给他听:“ぼくはきつねだ。I am a fox.わたしはうなぎです。I am an eel.”
外国から来た友人のために、英語に翻訳してやれて、ちょっと得意な日本人。「それじゃ、ぼくはたぬきだ、I am a racoon. すいませ~ん、ここ、たぬきひとつ」と注文。ちょっとだけ出来る人ほど、得意になって知っている外国語を披露したくなるものです。私のスワヒリ語吹聴のように。
能为从外国远道而来的朋友做翻译,这日本人小小得意了下,接着点餐:“那么,我就油渣乌冬面吧,I am a raccoon.不好意思~这里一个油渣乌冬面。”人就是这样,越是懂的少,越会得意起来想秀秀自己的外语,就像我爱显摆自己的斯瓦西里语一样。
留学生はびっくりして、日本ではレストランに入ったら、自分を動物にたとえるのが作法と思いました。辞書をひいて「I am a tiger. わたしはトラだ!」と、叫びました。阪神ファンが集まる食堂だったので、他の客にも、店主にもオオウケで、ライスは大盛りサービスになったとか。彼が「私は虎だ!」と叫んだおかげで阪神が優勝したのかどうかは、知りませんが、以後、彼が「私は虎だ」と注文するとライス大盛りがサービスになったそうです。
留学生大吃一惊,心想原来日本人进了餐馆,要把自己比作动物以示礼貌啊。于是他查了查字典,大叫一声“I am a tiger.我是老虎!”而那个食堂恰巧是阪神饭们(阪神:阪神タイガース,日本职业棒球队,团队标志为老虎)的聚集地,听见他这一喊,其他客人和店主都乐了,特别给他添了大份米饭。虽然我不知道他那一句“我是老虎”是不是唤来了阪神队的胜利,但据说从那之后,他点餐时只要说一句“我是老虎”,店家便会将他的米饭升级成大份的了。
こんな楽しい誤解なら、笑ってすませられますが、自分の母語にひきつけて、外国語を直訳的に理解しようとすると、さまざまな誤解もでてきます。自己紹介の「わたしはヤンです」と、食堂で注文することばの「私はうなぎです」は文の構造がちがいます。
像这种令人愉快的误会倒是能一笑了之,但在学习外语过程中,如果因为受母语影响而不能灵活理解外语的话,就会产生各种各样的误解。自我介绍中出现的“わたしはヤンです”和食堂点餐时出现的“私はうなぎです”这两句话在句子结构上是不同的。
「私はきつねです」が「I am a fox. 」になってしまったら、文の意味がことなってしまう、ということを教えていかなければなりません。このような誤解をときほぐし、ときほぐしして、日本語を教えていくのが、私の仕事です。
我们必须告诉学习者,如果“私はきつねです”成了“I am a fox.”,意思就变了。像这样在教日语的同时不断消除误会,是我要做的事情。
「ぼくはうなぎだ」を英語で言うなら「I'd like to order my lunch. My order is a grilled eel on the rice.」くらいの表現になるでしょうか。
“ぼくはうなぎだ(我要点鳗鱼饭)”用英语表达的话,差不多就是“I'd like to order my lunch. My order is a grilled eel on the rice.”吧。
「日本語のうなぎ文」
“日语中的鳗鱼句型”
奥津敬一郎の「うなぎ文」の解釈。「ぼくはうなぎダ」と言う表現は「ぼくはうなぎを注文する」と、同じ意味を表現していると考えました。「ダ」に「~ヲ 注文スル」という表現が含まれると、解釈したのです。日本語のコピュラ(繋辞)「ダ」に「述部代替機能」がある、と論じました。
注:コピュラ(copula)とは、文の主語とその後に置かれる語を結ぶための補助的な品詞をいう。コピュラによって主語と結ばれる語は名詞など、動詞以外の品詞が多い。
奥津敬一郎的“鳗鱼句型”是这么解释的,“ぼくはうなぎダ”和“ぼくはうなぎを注文する”这两个句子所表达的意思是一样的,可以说“ダ”就包含了“~ヲ 注文スル”这层意思。另外,他还做了这样的说明,日语中的系词“ダ”有“代替谓语的功能”。
もうひとつの解釈は、「ぼくはうなぎダ」という文は「僕が注文したいのはうなぎダ」という表現だ、という考え方。
还有一种说法是,“ぼくはうなぎダ”这个句子实际上是想表达“僕が注文したいのはうなぎダ(我想点鳗鱼饭)”。
「僕が注文したい食べ物は、うなぎダ」という文のうち、いわなくても分かっている「注文したい食べ物」という部分を省略した、という考え方です。
“僕が注文したい食べ物は、うなぎダ”,这个句子中“注文したい食べ物(想点的食物)”这部分显然被省略了。
日本語では、言わなくてもわかることは、お互いの「語用論pragmatism=実用的実践的言語運用法」の中で解釈し合い、いちいち表現しなくてもいいのです。
注:語用論 (pragmatics)というのは、一言でいえば、ことばとその意味を、私たちがふだん行っているコミュニケーションの場面にそくして、考えていこうとする学問のことです。
在日语中,那些不言而喻的事情,通过相互之间的“实用主义语用学=语言实用运用法”来解释,不需要一一说出口。
「食べた?」「うん、食べた」「じゃ、食べちゃうから待ってて」これで、すべてわかり合えます。
“吃了?”“嗯,吃了。”“那我吃了先,稍等。”像这样,意思全明白了。
いちいち主語と述語を出して、
没必要把主语谓语一个个搬出来。
「あなたは、お昼ご飯をもう食べましたか。それとも、まだあなたは昼ご飯を食べていないですか」
“你吃了午饭了吗?还是说,你还没吃午饭?”
「はい、わたしはもう昼ご飯を食べました。あなたがまだ昼ご飯を食べていないのなら、どうぞ、あなたも昼ご飯を召し上がってください。」
“嗯,我已经吃过午饭了,你要是还没吃午饭的话,请先吃午饭吧。”
「それでは、失礼して、お昼ご飯を食べますから、私が昼ご飯を食べ終わるまで、すみませんが少々お待ちください」
“那我就不客气了,我先吃午饭了,麻烦等我先吃完午饭,请稍等。”
と、いちいち言わなくてもいいんです。こんなふうに会話していたら、わずらわしいですよね。
要都像这样说话,可不烦死人了。
今日のポイント:話し手と聞き手がお互いに分かり合っていることは、省略することができる。
今日要点:说话人和听话人都明白的部分在说话时可省略掉。