三洋電機は,発振波長405nmの青紫色半導体レーザと同660nmの赤色半導体レーザ,同785nmの赤外半導体レーザを1つのパッケージに格納した,いわゆる3波長レーザを開発した。3波長レーザの開発発表はソニーに続き2社目である。
「Blu-ray Disc」や「HD DVD」といった次世代光ディスク装置の大半は,現行DVDや同CD系の媒体にも対応すると見られている。それを実現するには,次世代用の青紫,DVD用の赤,CD用の赤外の3つの光源が必要だ。この3光源をそれぞれ別パッケージの半導体レーザで用意していては,それぞれに対応する光学部品で光ヘッド内がいっぱいになってしまう。3波長レーザがあれば,かなりの光学部品を共用でき,部品点数を大幅に削減できる。
ハイブリッド型の構造を採用
三洋電機が開発した3波長レーザは,主に3つの点でソニーの開発品と似ている。第1には,いずれのレーザも高出力である点だ。CD,DVD,次世代光ディスクの3世代の媒体を,いずれも記録および再生が可能である。三洋電機の開発品におけるパルス発振時の定格光出力は,青紫色レーザが120mW,赤色レーザが170mW,赤外レーザが220mWと高い。光ヘッドの光利用効率などによって異なるが,三洋電機はそれぞれの光出力をCD,DVD,次世代光ディスク媒体に対する記録速度に換算して48倍速,12倍速,4倍速相当とする。ソニーの開発品の光出力は,それぞれ120mW,150mW,200mWだった。
第2の共通点は,3種類の半導体レーザ素子の一体化方法にある。三洋電機は今回,青紫色レーザ素子の上に赤色レーザ素子と赤外レーザ素子をそれぞれ載せる,いわゆるハイブリッド型の構造を採用した。ソニーも同様の構造を採る。
第3の共通点は,青紫色レーザの基板材料にGaNを使うところである。三洋電機はこれまでもGaN基板を使う高出力の青紫色半導体レーザを開発してきた。このGaN基板は,ハイブリッド型の3波長レーザで優れた特性を発揮する。それは,半導体レーザで発生した熱をヒートシンクに逃がす役割である。GaNは,ヒートシンク材料並みに高い熱伝導率を持つことを利用する。青紫色レーザ素子の上に実装した赤色レーザや赤外レーザで発生する熱が逃げやすく,熱がこもらない。
青紫色レーザの発光点を中心に配置
一方で,相違点は半導体レーザの発光点の配置にある。ソニーが開発した3波長レーザは,青紫色レーザの発光点の直上に赤色レーザの発光点を配置し,赤外レーザの発光点はズラした形だった。これに対して三洋電機の配置は,青紫色レーザの発光点を中央にして,その左右にそれぞれ赤色レーザと赤外レーザの発光点を置く。
こうすると,青紫色レーザの発光点の直上にp型電極を設けることができ,電極構造が簡素になる。n型電極を共通化した,一般的なカソード・コモン結線で使える。青紫色レーザから赤色レーザ,または赤外レーザまでの発光点の間隔は約110μm。赤色レーザと赤外レーザの発光点の間隔は約220μmとなっている。 |